ECBは金融機関の安定とインフレ抑制、どちらを優先するのか
-前日サマリー-
ドル円は134.28円でオープン。東京市場では、ゴトー日の本邦実需勢によるドル買いが入ったほか、米金利が上昇し日米金利差拡大によるドル買いが進みました。ロンドン市場に入ると、始めは東京市場からのリスクオンムードが続き一時135円台を付けるも、17:30前にサウジ国立銀行のクレディ・スイスへの追加支援否定報道が伝わると、急速にリスクオフのユーロ売り、円買いが進み、ユーロ円は145円から139.60円へ大幅安となりました。NY市場では、クレディ・スイスの安定化に向けてスイス当局・中銀が動くと伝わりリスクオフムードは巻き戻しへ、ドル円は133.42円で取引を終えました。
-ECBは金融機関の安定とインフレ抑制、どちらを優先するのか-
本日のイベントは、ニュージーランド第4四半期GDP、豪雇用統計、米新規失業保険申請件数、米住宅着工件数、米フィラデルフィア連銀製造業景気指数、ECB政策金利、ラガルドECB総裁記者会見が予定されています。
昨日は、クレディ・スイスを巡るヘッドラインで大荒れ相場となりました。きっかけは「クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ国立銀行が追加支援の可能性を否定した」と伝わったことです。結果的にスイス当局が「必要ならば、クレディ・スイスに流動性を提供する」との声明を出したため、昨日のうちに過度なリスクオフムードが一服した形となりましたが、米国のみならず欧州でも金融機関の安定経営に疑いの目が広がっている状況と言えます。警戒度をもう一段階上げて動向を見てゆく必要がありそうです。
本日はECB政策金利が控えています。最近までラガルドECB総裁は、3月会合では0.5ポイントの利上げを実施するとアナウンスし続けてきました。しかし、シリコンバレー銀行破綻などを受けて、市場予想は0.25ポイントの利上げに傾きつつあります。これまでのメインテーマであった「インフレ抑制」を優先して、従来のアナウンス通り引き締めを行うのか、はたまた金融機関の安全性を鑑みて利上げペースを減速するのか、要注目です。
昨日発表された米2月小売売上高は前月比-0.4%と市場予想を下回ったほか、米2月PPIは前月比-0.1%と12月以来のマイナス(物価安)となり、米国経済にも引締め(利上げ)効果が見え始めました。金利先物が織り込むFRBの利上げ観測は、3月FOMCでの「0.25%利上げ」と「金利据え置き」の間でちょうど半分に割れている状態です。本日のECB政策金利が0.5%利上げならば、米国もそれに追随して利上げを継続するシナリオが想定されますが、ECBが利上げペースを減速させた場合は、FRBの利上げ停止観測が広がる可能性もあります。どちらにせよ、ECBの結果が来週のFOMCの市場予想に影響を与える前提で、本日は取引に挑みたいです。