遂に本邦実弾による為替介入実施、円安トレンド転換の可能性は?見通し面のポイントを整理
-前営業日サマリー-
ドル円は144.00円でオープン。東京市場では、日銀金融政策決定会合にて従来の金融緩和策維持が示されたほか、黒田日銀総裁から利上げは当面ないとの姿勢が強調されたことで円売りに、ドル円は節目145円に乗せるなど底堅く推移しました。しかし、欧州市場に入ると一気に円高へ。本邦神田財務官から為替介入の実施が表明されると、ドル円は145.84円から140円中盤まで一時5円超の急落、クロス円も軒並み円高に振れました。その後は日本の単独介入との思惑の広がりなどでドル円はやや反発も、NY市場入りにかけて140.34円付近まで再度下落と上値重たく推移しました。このほか欧州市場では、スイスと英国の政策金利が発表、共に予想通りの利上げ幅となったことで直後はセルザファクトの動き優勢に、またトルコの政策金利発表は、事前予想に反して2会合連続のサプライズ利下げとなり、トルコリラは対ドルで史上最安値を更新しました。そして、NY市場でも介入を受け神経質な値動きが続いたものの、ドル円は米長期金利の推移などを受けてじりじりと反発、押し目買いも支えに一時142円中盤まで戻し、142.36円で取引を終えました。
-遂に本邦実弾による為替介入実施、円安トレンド転換の可能性は?見通し面のポイントを整理-
本日のイベントは、仏独欧英PMI(速報値)、加小売売上高、スイスジョーダンSNB総裁発言、米PMI/パウエルFRB議長・ブレイナードFRB副議長・ボウマンFRB理事発言が予定されており、本邦が秋分の日で休場となります。
昨日は、遂に政府・日銀が実弾による為替介入を実施、およそ24年ぶりの円買い(・ドル売り)介入を受けて、マーケットは急激に円高に振れました。実施後に行われた鈴木財務相及び神田財務官の記者会見では、介入規模などの詳細の公表はなく、今後の実施における具体的な数字、為替水準への言及も避けられたことで、現時点では不透明な点が多い状況です。ただ、今後も対ドルでの円相場の動向次第では複数回介入が実施される可能性は高く、毎月末に公表される介入実績などから保有する「残弾」や実施可能性を探っていきたい局面となります。
当面の見通し面のポイントとしては、まず実施権限を有する財務省が「円相場をどの水準で死守し、結果どの水準までもっていきたいのか」、そして「今回の介入により円安トレンドが転換するのか」といった点に着目していきたいです。前者については、現状のデータをもって当局が意図する最終的な水準を推察するのは困難ながら、実施水準に関しては、一先ずドル円145-146円程度が上限ラインとして意識されるとみています。したがって、今後米国の利上げ加速を後押しする強い米指標等を受けてドル買い・ドル円上昇でこのラインに近づくようであれば、再度介入から数円程度急落のシナリオは想定しておきたいです。しかしながら、後者の円安トレンドの転換に関しては、主要国との金融政策差・金利差といったファンダメンタルズ面が主因である点を踏まえると、トレンドを押さえつけるまでの効果期待は難しいと考えられます。掘り下げると、昨日の日銀金融政策決定会合ではこれまで通り金融緩和を維持、他方主要国は軒並み利上げサイクルに突入する中で、遂にスイスが利上げによりマイナス金利脱却と「取り残された日本円」の構図が鮮明となっています。つまりは、根幹にある政策変更がない以上、今後も各国との金融政策の方向性の違いが意識されるため、マーケットでの「介入」への警戒感が和らいだタイミングで再度円売り活発化へ等のシナリオは念頭に置きつつ、足元のボラティリティについていきたいです。
このほか、本日は欧州PMI祭りから日本時間深夜にはパウエルFRB議長をはじめ、米FRB高官の貴重な発言機会が予定されています。週末ポジション調整の動きを含め値動きが活発化する可能性が高いとみて取引に臨みたいです。