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為替相場が将来上がるのか下がるのかを予測する上で、多くの投資家が経済指標の結果をチェックしています。ここでは、経済指標とはそもそもどんな指標なのか、チェックするときのポイントや注意点をご説明します。
経済指標とは世界各国の政府や中央銀行が発表している経済データで、発表結果はFX取引が行われる外国為替市場に大きく影響を与えます。発表結果が事前予想から大きく乖離する場合は相場を大きく動かすことも少なくなく、ファンダメンタル分析において値動きを左右する重要なデータとして扱われます。「みんなのFX」の経済指標カレンダーは日別・週間・月間で見ることができます。例えば週間・月間のデータは大まかな発表のスケジュール感を確認するのに役立ち、日別のデータは直近で発表される指標の時間・事前予想値をチェックする時に使うとよいでしょう。
経済指標の結果を見るときのポイントはいくつかあります。経済指標は月毎や四半期毎に発表され、前月比(または前期比)か前年同月比(または前年同期比)で比較することが一般的で、前回発表された数値から傾向が続いているのか、または傾向が変わったのかをチェックします。例えば、米国の消費者物価指数が上昇傾向にある局面で、上昇傾向が加速する発表結果となった場合はインフレ傾向にあると判断されて政策金利の上昇期待が高まり、ドル高が進行しやすくなります。逆に上昇傾向だった消費者物価指数が低下した場合はインフレの落ち着きが意識されて金利の先高観が弱まります。もう一つは事前予想値と発表数値の比較です。為替レートは現在起きている様々な事象や将来起こりうるであろう材料を織り込みながら動いています。当然ながら経済指標の予想値が出た段階で為替市場には結果が織り込まれ始めていて、結果が予想値とほぼ同じになれば為替レートの変動は小さくなります。逆に大きく乖離した場合は為替レートはその結果を織り込みに動くので、結果的に大きな値動きとなることがあります。また、速報値と確報値という形で2回発表される経済指標は速報値に対する反応が当然大きく、GDPといった大きな指標でも速報値と確報値では為替市場の反応が大きく異なる点は重要なポイントです。
経済指標を確認する上で注意したい点も抑えておきましょう。例えば同じ指標でも国によって集計方法や期間が異なることがあります。集計時期にタイムラグがあることもあり、重要度が高い指標を狙って取引する場合には事前にしっかりと準備したいです。また、物価指標などで大きく上下変動した場合は、項目や名目値ではなく実質値を比較するなど、確認を怠らないようにすると相場のヒントがあるかもしれません。特に経済指標は結果を受けて市場参加者による仕掛け的な取引が出る時もあり、発表前にポジションを持たなくても発表後の相場の流れが収益チャンスになることを覚えておきましょう。
経済指標の発表結果が外国為替市場に大きな影響を与えるとは言っても、主要国のすべての経済指標をチェックするのは困難です。そこでここからは、FXを取引する際に必ず押さえておきたい経済指標とその内容について説明します。
米国雇用統計は国の労働省労働統計局(BLS)が毎月発表している、米国の雇用情勢を表す経済指標です。毎月12日を含む週のデータが集計され、原則翌月第1金曜日に発表されます。頻度が高く、調査対象が多いうえ、発表時期も早いことから、為替市場で最も注目されている指標です。計10項目のデータの中で、特に注目されるのは非農業部門雇用者数(NFP:Non-Farm Payroll)と失業率、平均時給です。発表数値が事前予想から乖離することが少なくなく、発表直後に大きな値動きにつながることもあります。
>米国雇用統計について詳しく見る
>そのほかの米国の経済指標を詳しく見る
貿易収支は一国の貿易における一定期間内の輸出額と輸入額の差を示す指標です。貿易は実需の為替取引が伴うため、中長期の相場の流れを予測する際に貿易収支を重視する投資家もいます。毎月各国で発表され、特に米国の貿易収支は市場参加者の注目度が高いです。米国は貿易赤字と財政赤字のいわゆる「双子の赤字」という問題を抱えており、貿易赤字が拡大する場面ではドル安が進行する傾向があります。
国内総生産(GDP)は一国の国内で一定期間内に生産された製品やサービスなどの付加価値の合計を示す指標です。名目GDPと実質GDPの2種類があり、名目GDPから物価上昇を除いた実質GDPは一般的に経済成長率を見る上で重要となります。国内総生産はその国の経済状況を示すことから投資家の注目度が高く、特に速報値が発表されるタイミングでは大きな値動きになる傾向があります。
日銀短観は「全国企業短期経済観測調査」の略称で、日銀によって実施される全国の企業経営者を対象としたアンケート調査を基に集計される指標です。毎年4月、7月、10月、12月に発表され、市場では業況判断指数(DI)が注目されます。プラスであれば好況、マイナスであれば不況と判断でき、景気の流れをとらえる上で、特に大企業製造業の業況判断DIが重宝されます。海外では”TANKAN”の名称で知られています。
消費者物価指数とは消費者が購入する物やサービスの価格(物価)の変動を示す指標です。一国のインフレ状況を把握する際に使われることが多く、特に季節性要因を受ける生鮮食品を除いた「コアCPI」は非常に注目されます。中央銀行の政策運営の中で「物価目標」を設定しており、その指標としても採用されています。一般的に物価上昇に過熱感がある時は中銀の利上げ期待から通貨高が進行する傾向があると言われています。なお、物価の変動を生産者側から測る経済指標として生産者物価指数(PPI)という指標も発表されています。
政策金利とは中央銀行(米国のFRB、英国のBOE、欧州のECBなど)が金融政策を実行する上で設定する金利です。政策金利を調整することで、景気の過熱時は経済を抑えたり、逆に失速時は経済を刺激したりします。またFX取引では2国間の金利が為替レートに影響を及ぼすことから、市場参加者の注目度が高いです。各国の物価や経済状況によっても金利が違い、新興国では通貨安防衛を目的として政策金利を引き上げる場合もあります。日本では「無担保コールレート翌日物」、米国では「FFレート金利の誘導目標」が政策金利を指します。「公定歩合」は政策金利を意味すると思われがちですが、国内金利が自由化されたことでその役目を終えました。
失業率は一国の労働力人口のうちに占める失業者の比率を示す指標です。国によって算出方法や公表する頻度が異なり、失業率と新規雇用者数を同時に公表する場合もあります。雇用情勢を把握するのに用いられる代表的な指数で、中央銀行が金融政策を決定する上での重要な指標となります。FX取引では米国や英国、オーストラリア、カナダの失業率が発表される際に為替相場が大きく動く傾向があります。
購買担当者景気指数は企業の仕入れ担当者に対して行ったアンケート調査の結果を指数化した指標です。世界の様々な機関で公表され景気指標としてわかりやすく、50ポイントを節目として上回れば景況感が良く、下回れば景況感が悪いと判断できます。製造業PMIは景気の実態を反映する先行指標として注目されることが多く、特に「速報値」の公表時は為替レートが大きく動く傾向があります。
個人消費支出は個人が財やサービスの消費にどれだけ支出したかを示す指標です。米国GDPの約2/3以上を個人消費が占めることから、米商務省の経済分析局(BEA)が公表する個人消費支出は景気動向を把握するのに役立ちます。また、名目PCEと実質PCEから算出される「PCEデフレーター」は注目度が高く、価格変動の激しい食品やエネルギーを除いた「PCEコア・デフレーター」はFRB(連邦準備制度理事会)の参考指標であることから特に注目されます。
ISM景況指数は全米供給管理協会(ISM)が企業の購買担当者を対象としたアンケート結果を基に算出する景況感を示す指標です。製造業・非製造業で別々に公表され、先行度が高い米国指標であることから非常に注目度が高いです。景況感を0~100で表し 、50ポイントの節目を上回れば景況感が良く、下回れば景況感が悪いと判断できます。
消費者信頼感指数は一般消費者へのアンケート調査結果に基づき集計された、経済に対する消費者マインドを示す指標です。コンファランスボード(全米産業審議委員会)が発表する米消費者信頼感指数や、ミシガン大学が調査した「ミシガン大消費者信頼感指数」が一般的に広く知られています。GDPや個人消費とも相関性があり、先行指標であることも注目される理由です。
小売売上高は様々な形態の小売店の売上高を示す指標です。世界各国で発表されますが、米国では個人消費がGDPの2/3以上を占めることから、米国の小売売上高に対する注目度は他国と比べて高いです。個人消費とも相関性があり、特に自動車を除いたコア・小売売上高は重要視される傾向にあります。
鉱工業生産は主に鉱業や製造業の生産動向を示す指標です。毎月各国で発表されることや製造業の状況が把握しやすいことから注目されることが多く、速報性が高い点も優れています。同時に発表される「設備稼働率」も併せて確認したいです。
景況感指数は景気動向を示す指標です。世界の様々な機関で公表され、主にドイツの「ZEW景況感指数」や「IFO景況感指数」が挙げられます。これの2つの指標はユーロ圏を代表するドイツの指標であることから、ユーロ相場に影響を与えるのはもちろんのこと、ECB(欧州中央銀行)の政策見通しを予想する上で重要です。
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