FXレポート

米FOMCを前にドル売り優勢か!?

金曜日のドル円だが、東京市場序盤は良好な米経済指標を好感したNY市場での流れを引き継ぎ、米10年債利回りの上昇につれて83.00円を挟んで底堅く推移した。その後は83.00円付近にある本邦輸出勢のドル売りと中国のインフレ懸念や商品相場の下落に伴うリスク回避のドル買いが交錯し、一進一退の値動きとなり方向感は示されなかった。しかし、欧州勢参加後は強い独経済指標や英経済指標を受けて欧州株価が上昇し、リスクテイクの地合いに対ユーロ、ポンド、スイスフランでドル売りが強まったことを受けドル円も一時82.530円まで下落。NY時間にGEやグーグルから好調な決算が発表されたことが好感され米10年物国債利回りが上昇に転じると小幅に反発する場面もあったが上昇は限定的で82.599円で取引を終えた。

ユーロ円は、中国の金融引き締め懸念を背景とした下落が一服し、中国の不動産規制観測の後退などを背景に、上海株が一時前日比2%超まで上昇幅を拡大したことを受けて、リスク選好の円売りが活発化し東京市場には112.10円付近へと上昇。その後は、上海株が上昇幅を縮小する動きとなったことから111.70円付近へと反落したものの、欧州勢の参入後は欧州高債務国の信用不安の鎮静化を期待したユーロ買いが優勢となり、112.20円付近へと上値を拡大。欧州市場中盤にも独1月IFO景気動向が市場予想を上回る好結果となった事や、BGA(ドイツ卸売・貿易業連合会)が「ECBは可能な限り早く金利を引き上げるべきだが、危機が原因でできないだろう」とし、危機が終了次第利上げすべきとの見解を示した事が意識され続伸した。また、引けにかけても200日移動平均線を上回った事が上昇の流れに拍車をかけ、力強い値動きが継続し112.473円で取引を終えた。
    
                                今週の展開

ドル円は、米中首脳会談、中国の経済指標と中国関連のイベントを通過したことで、思惑的な円買いの流れはひとまず一服している上、米経済指標では強弱材料が混在しているものの、雇用関連指標は概ね好調となっており今週のサポート要因となりそうだ。しかし、今週の火・水曜日予定されているFOMCにおいて、これまで量的緩和策に反対票を投じてきたホーニグ・カンザスシティ地区連銀総裁が今年投票メンバーから外れる上、タカ派の新投票メンバーで、これまで量的緩和第2弾に懐疑的な見方を示してきたプロッサー・フィラデルフィア地区連銀総裁とフィッシャー・ダラス地区連銀総裁の両総裁も今月に入り、QE2の遂行を阻止する意向がないことを示唆している。その為FOMCでは金融緩和政策の維持が全会一致で決定されるとの見方が浮上しており、金融緩和策解除のハードルが高くなるとの見方から思惑的なドル売りを誘う可能性もあり、ドルロングの深追いはさけたい。約1カ月ほど強い抵抗帯となっている83.50円付近を突破するには、新規の強気材料が必要となろうか。

米経済指標としては、米国では25日にケース・シラー住宅価格指数、消費者信頼感指数、住宅価格指数、リッチモンド連銀製造業指数、26日に米新築住宅販売件数、27日米耐久財受注、新規失業保険申請件数、米住宅販売保留指数、28日に第四半期実質国内総生産、ミシガン大消費者態度指数と重要な経済指標が発表される。また、アメリカン・エキスプレスやヤフー、ボーイング、マイクロソフト、アマゾン、AT&Tなど米国の有力企業の決算発表のほか、オバマ米大統領の一般教書演説などにも注目したい。

ユーロ円は、中国の金融引き締め懸念のほか、大手格付け会社がポルトガル格下げの可能性に言及しており、欧州信用リスクに対する慎重な姿勢は維持しておきたい。しかし、ユーロ圏諸国が欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を通じて、ギリシャなど財政難に陥った国の国債を買い取ることを検討しており、債務不履行の可能性は後退するとの見方が浮上していることで最悪の事態は避けられそうだ。また、米中首脳会談や中国経済指標を乗り切った安心感からユーロはポジティブなニュースに対して素直に反応する地合いとなっており、上昇トレンドには逆らわないほうが無難かもしれない。テクニカル面でも上値抵抗として意識され日足一目均衡の雲上限112.00円や、年末高値112.20円を一気に上抜けており、同水準をしっかり値固めできるようであれば昨年10月6日高値の115.643円を試す展開が視野入りする可能性も出てくるだろう。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   80.00-84.00
ユーロ・円 109.50-115.50
ポンド・円 126.00-135.00

【今週の主な経済指標】

1月24日
  9:30 AUS  豪・四半期生産者物価指数 
 17:28 GER  独・製造業PMI 
 17:28 GER  独・サービス業PMI 
 17:58 EUR  ユーロ圏・サービス業PMI 
 17:58 EUR  ユーロ圏・製造業PMI 

1月25日
  9:30 AUS  豪・四半期消費者物価指数 
 18:30 GBR  英・四半期GDP 
 21:00 CAN  加・消費者物価指数 
 21:00 CAN  加・消費者物価指数 
 23:00 USA  米・S&P/ケースシラー住宅価格指数 

1月26日
  0:00 USA  米・CB消費者信頼感指数
 14:00 JPN  日銀金融経済月報
 18:30 GBR  英・金融政策委員会
1月27日
  0:00 USA  米・新築住宅販売件数
  4:15 USA  米FOMC政策金利発表
  5:00 NZL  NZ中銀 政策金利発表
  8:50 JPN  日・通関ベース貿易収支
 19:00 EUR  ユーロ圏・業況判断指数
 22:30 USA  米・耐久財受注
 22:30 USA  米・新規失業保険申請件数 
1月28日

  0:00 USA  米・中古住宅販売保留指数
  8:30 JPN  日・完全失業率
  8:30 JPN  日・東京消費者物価指数 
  8:30 JPN  日・全国消費者物価指数 
  8:50 JPN  日銀金融政策決定会合議事要旨
 22:30 USA  米・四半期GDP 
 22:30 USA  米・四半期個人消費  
 22:30 USA  米・四半期コアPCE  
 22:30 USA  米・四半期GDP価格指数  
 23:55 USA  米・ミシガン大学消費者信頼感指数 

≪2011年1月21日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ベア」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
82円台ではリバウンド狙いの参加者が目立ち約80%が「ブル」となっている。テクニカル的には
2010年9月16日高値85.926円→2010年11月1日安値80.239円のフィボナッチ61.8%戻しの83.14円を
抜けて1月7日高値83.70円を超えるかが上値の焦点となろう。仮に同水準を明確に突破した際は
同フィボナッチ76.4%戻しの84.58円まで上値余地を拡大してみたい。下値目処は日足一目均衡雲
の下限である82.35円付近が短期的なサポートで、割り込むと年初来安値81.607円まで主だった
サポートがないため注意したい。

ポンド円は「ベア」
上海総合やNYダウの上昇を受けてリスク選好のポンド買いが優勢となってポンドは続伸したもの
の、年初来から断続的に上昇しており、高値警戒感が漂うなか逆張りの売りが多数を占め「ベア
」となった。しかし、欧州懸念の後退に加え、英CPIの上昇による利上げ観測の高まりを背景に、
引き続き堅調地合いを維持する公算は少なくないだろう。今週は英10-12月期国内総生産(GDP)
速報値、さらに1月分の英金融政策委員会議事録(MPC)の発表がターニングポイントとなろう。

豪ドル円は「ブル」
中国の金融引き締め懸念や上海の不動産取引税導入の観測は完全に払拭されていないことから
週末を前に見切り売りが強まって3日続落となったが、参加者は依然「強気」スタンスを維持し
ている。主要国との金利差が意識されて押し目を拾われやすく下方向への動きは限定されそう
ではあるが、目先は洪水の影響で景気の減速懸念から利上げを急ぐとは考えづらく、上昇余地
は限られそうだ。また、中国は2月の旧正月連休前に追加利上げを実施するとの見方も重しとな
る可能性もあり、バイアスはやや弱気としたい。

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