FXレポート

ドル円84円台半ばで失速。上値の重い展開が継続か

昨日のドル円は、方向感に乏しく動意の薄い一日となった。東京市場序盤では米上院でのブッシュ減税の延長法案可決を背景にドル買いが進行し、84.38円付近へと上値をうかがう動きをみせたものの、米長期金利が小幅に低下していたことや、日経平均等のアジア株やNYダウ先物の株式市場の狭いレンジ取引を受けて材料難から、ドル円は84.20円前後での小動きとなった。欧州勢参入後には、対ユーロで円買いが強まるとドル円も連れ安となり、83.964円まで下落。しかし、米国時間に入ると、米新規失業保険、住宅着工件数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数等が市場予想を上回ったことからドル円は84.440円まで上昇した。引けにかけては再び米長期金利の低下に伴う円買い・ドル売りが進んだことから一時84円割れの場面もみられたものの、終値は84.024円と84円台を維持して取引を終えた。

ユーロは序盤、米長期金利の上昇が一服したことから対ドルは1.3235ドルまで小幅に上昇したものの、東京市場終盤にかけて概ね1.3220ドル前後での推移となった。対円でも方向感に欠ける展開となる中、ユーロを積極的に買い進める手がかりもなく、111円台半ばでの推移となった。欧州市場に入ると欧州連合統計局が発表した11月ユーロ圏消費者物価指数改定値が前年同月比で1.9%上昇したと伝わったが、特に材料視されることもなく、むしろ、米金利低下に伴うドル円の下げにつられる形で111.10付近まで下落した。NY市場では良好な米景気指標の結果を受けたリスク選好の回復に伴い、ユーロ円は一時111.57円付近まで強含む展開がみられたものの、引けてかけては111.229円まで反落して取引を終えた。

                              本日の展開

ドル円は好調な経済指標を受けて上値を試す場面はあるものの、84円台半ばに控えるレジスタンスに抑えられている。国内輸出企業の想定レートであることから売り圧力が強まる水準のため、11月後半から上値を抑えられており、かなり強いレジスタンスであることがうかがえる。米景気の回復を裏付ける経済指標や上昇基調の米利回りを背景にドル買い意欲は強いためレジスタンス突破に期待が膨らむものの、来週はクリスマス・年末休暇が本格化することから、本日はポジション調整に伴うドル売り圧力に注意する必要があるだろう。下落した場合は12月14日直近安値82.839円から12月15日直近高値84.505円までの上昇に対して61.8%押しとなる83.50円近辺が意識される水準となりそうだ。

ユーロ円はユーロ圏経済指標が予想の範囲内の結果だったことや、開催中のEUサミットにおいて目新しい材料が出てこなかったため弱気なセンチメントは続いている。格付け機関ムーディーズがギリシャのソブリン債格付けを引下げる可能性を示唆する等、連日のようにユーロ圏のソブリンリスクを意識させる話題がとりだたされている。PIIGS諸国は財政懸念に伴い既に利回りが上昇しているため、ある程度織り込み済みの材料とも考えられるが、格付け引き下げの対象国が更に増加した場合、欧州信用不安を煽る材料となる可能性は否定出来ない。本日は独IFO企業景況感指数の他、EUサミットの結果や要人発言が変動要因として注目されるが、サプライズが無ければ下向きの流れが継続し12月10日直近安値110.48円まで下落する展開も想定しておきたい。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   83.10-84.30
ユーロ・円 109.80-112.50
ポンド・円 129.50-133.50

【今日の主な経済指標】

16:45 FRF 企業景況感指数
18:00 DEM IFO企業景況感指数
19:00 EUR 建設支出[前月比]
19:00 EUR 建設支出[前年同月比]
19:00 EUR 貿易収支
00:00 USD 景気先行指標総合指数[前月比]

≪2010年12月16日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ブル」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
米長期金利の上昇が一旦落ち着いたところで、ドル売りが優勢の展開となったが、
84円前後ではドル買い意欲も強く「ブル」となった。前日の米住宅着工件数(予
測:55万件 結果:55万件)と予想をやや上回る結果を受けて、ガイトナー米財務
長官が「米住宅市場に安定化し始めている兆しがある」と発言しており、ドルに
とって明るい材料になりそうだ。米長期金利が落ち込む局面ではドル売り優勢の
展開となっているが、米経済回復期待から下値への影響は限定的と考えられる。

ポンド円は「ブル」
英小売売上高指数は前月比では+0.3%と市場予想通りの結果だったが、10月分は
+0.3%から+0.5%に上方修正となったことを受けて底堅い値動きとなっている。
加えて今週の米経済指標が比較的好結果であることを背景に米景気回復期待も日
増しに高まっていることもあり、参加者は「ブル」継続となった。しかし、米格
付け会社ムーディーズが「英国の地方自治体は、予算削減とガバナンスの変更に
よるリスクに直面している」と指摘しており、英格付けに対しても見直しが入る
との見方もあり、ポジションの傾けすぎには注意したい。

豪ドル円は「ブル」
原油や金を始め商品市況が軒並み大幅安となるなど、リスク志向が後退する展開
となったが、金利差を背景とした根強い買いが継続しており「ブル」となった。
しかし、欧州を取り巻くソブリンリスク再燃から豪ドル買いを支えていた商品相
場も軟調となりつつある。また、年度末に向けたポジション調整も想定されるこ
とから下振れリスクに対する警戒を高めておきたい。

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