FXレポート

欧州ソブリンリスク第二段階突入か!?

金曜日のドル円は、オセアニア市場でユーロ円のストップ売りにつられた他、本邦輸出企業の売りにも押され82.25円付近まで下落。その後は週末のポジション調整でやや動意が乏しかったことや、日経平均を含むアジア株やGLOBEXのNYダウ先物の大幅下落を背景としたリスク回避のドル買いと円買いが交錯したこともあり、東京市場終盤にかけて82.40円前後でのこう着となった。しかし欧州勢の参入後はGLOBEXのNYダウ先物が前日比110ドル超まで下げ幅を拡大するなど引き続きリスク回避ムードが強まる中、海江田経済財政担当相が「円高は日本だけで対応することは困難である」との見解を示したことも円買いを促し、一時81.652円まで下落した。ただし、ニューヨークの取引時間帯に入ると米長期金利が上昇し日米金利差拡大を背景としたドル買いや、11月ミシガン大学消費者信頼感指数は69.3と市場の事前予想を上回り、2010年6月以来の高水準を記録、構成項目である現在の景況感や先行の景況感も共に前回から拡大したことで82.652円まで上値を拡大した。その後は材料難から動意が乏しくなり、4日続伸となる82.521円で取引を終えた。

ユーロは、欧州PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)諸国の信用不安拡大を背景に対ドル、対円とも軟調な地合いが継続する中、日経平均が軟調な展開となったほか、アジア株やGLOBEXのNYダウ先物も軒並み大幅な下落となるなどリスク回避ムードも広がったことから、東京市場終盤にかけて対ドルは1.3595付近、対円も112.00円付近まで下落した。さらに欧州勢の参入後には海江田経済財政担当相が円高に対して弱気な発言をしたことから、対円は一時9月16日以来の安値となる111.049円まで急落、対ドルも一時1.3575付近へと連れ安となった。ただNY勢参加後はイタリア政府が実施した国債入札が無事通過したことや、欧州周辺諸国とドイツ国債の利回り格差が縮小したため、買い戻しが優勢となり対円で113.40円付近、対ドルで1.3775付近まで買われた。終値は対円が113.000円、対ドルは1.36928ドルとなった。

                                今週の展開

ドル円は、米有力シンクタンクが「需給ギャップが予想以上に速いペースで縮小した場合、FRBは米国債買い入れ規模を縮小する可能性がある」と報じたこともあり、米債券市場の動向が注目される。米雇用統計の上振れを受けて量的緩和第三弾の観測が遠のいている局面だけに、米債券利回りが急上昇するような場合は、ドルの買い戻しが加速する可能性も考えられる。また、米系ヘッジファンドは、年末からさかのぼること45日前ノーティスということで、15日まではポジションクローズの動きも本格的になり、積み上がったドルショートの巻き戻しが散見する展開も頭に入れておきたい。テクニカル面ではこれまでの強いレジスタンスだった82.00円付近がサポートに変化しており、同水準を割れることなく終値ベースでしっかりと定着する事が出来れば新たな反発局面に入る可能性もあるだろう。今週の米経済指標は15日にNY州製造業業況指数、米小売売上高、米企業在庫、16日に米卸売物価指数、対米証券投資、月米鉱工業生産、米住宅建設業者指数、17日に月米住宅着工件数、月米消費者物価指数、米実質所得、18日に米新規失業保険申請件数、米景気先行指数、米フィラデルフィア地区連銀業況指数と重要な経済指標が目白押しとなっている。特に物価指数関連、住宅関連、鉱工業関連は注目したいところだ。

ユーロは、欧州圏のソブリンスプレッドの拡大継続で欧州債売りが第二段階に入ったと思われる。アイルランド、ポルトガルの財政問題やギリシャのCDS・利回り格差は拡大が続いており、今週もロング・ポジションの巻き戻しや見切り売りが一段と加速する可能性も否めない。また、年末を控えたドルキャリーの巻き戻しに加えてFRBの米国債買い入れが、場合によっては縮小されるとの見方が浮上しており、米債券利回り上昇・株安・リスク回避の流れとなる可能性も小さくないとみる。

[今週の予想レンジ]
ドル ・円   80.00-84.50
ユーロ・円 105.00-115.00
ポンド・円 125.00-135.00

【今週の主な経済指標】
   11/15
  06:45  NZD  小売売上高指数     
  08:50  JPY  四半期実質国内総生産(GDP、速報値)     
  09:01  GBP  ライトムーブ住宅価格     
  13:00  JPY  日銀・金融政策決定会合(1日目)     
  13:30  JPY  鉱工業生産・確報値     
  16:45  FRF  経常収支     
  17:15  CHF  生産者輸入価格     
  19:00  EUR  貿易収支     
  22:30  USD  ニューヨーク連銀製造業景気指数     
  22:30  USD  小売売上高        
      
   11/16  
  00:00  USD  企業在庫    
  08:50  JPY  第三次産業活動指数    
  09:30  AUD  豪準備銀行(中央銀行)、金融政策会合議事要旨公表    
  16:45  FRF  非農業部門雇用者・速報値    
  18:30  GBP  小売物価指数(RPI)    
  18:30  GBP  消費者物価指数(CPI)    
  19:00  DEM  ZEW景況感調査(期待指数)    
  19:00  EUR  ZEW景況感調査    
  19:00  EUR  消費者物価指数(HICP、改定値)    
  22:30  USD  卸売物価指数(PPI)    
  22:30  CAD  製造業出荷    
  23:00  USD  対米証券投資(短期債除く)    
  23:15  USD  設備稼働率    
  23:15  USD  鉱工業生産    
     
   11/17  
  00:00  USD  NAHB住宅市場指数    
  14:00  JPY  景気先行指数(CI)・改定値    
  14:00  JPY  景気一致指数(CI)・改定値    
  18:30  ZAR  小売売上高    
  18:30  GBP  失業保険申請件数    
  18:30  GBP  失業率    
  18:30  GBP  英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨    
  19:00  EUR  建設支出    
  19:00  EUR  建設支出    
  21:00  USD  MBA住宅ローン申請指数[前週比]    
  22:30  USD  消費者物価指数(CPI)    
  22:30  USD  建設許可件数    
  22:30  USD  住宅着工件数    
  22:30  USD  消費者物価指数(CPI)    
     
   11/18  
  06:45  NZD  四半期卸売物価指数(PPI)    
  08:50  JPY  対外対内証券売買契約等の状況   
  09:00  SGD  四半期国内総生産(GDP、確定値)    
  16:15  CHF  貿易収支    
  18:00  EUR  経常収支    
  18:30  GBP  マネーサプライM4速報値    
  18:30  GBP  小売売上高指数    
  22:30  USD  新規失業保険申請件数    
  22:30  CAD  卸売売上高    
  22:30  CAD  対カナダ証券投資額    
  22:30  CAD  景気先行指数    
  23:00  ZAR  南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利    
     
   11/19  
  00:00  USD  フィラデルフィア連銀製造業景気指数    
  00:00  USD  景気先行指標総合指数    
  08:50  JPY  日銀・金融政策決定会合議事要旨    
  13:30  JPY  全産業活動指数    
  16:00  DEM  生産者物価指数(PPI) 

≪2010年11月12日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ベア」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
欧州の財政懸念の高まりを背景とした対ユーロでのドル買いや、米追加金融緩和の見方を
後退させた米有力シンクタンクのレポートなどを受けた全般的なドル買いの流れから「ブ
ル」が継続した。G20本会議において新興国やユーロ圏諸国より米国の金融緩和策に対す
る批判が集中したことでドルを巻き戻す動きが進んでいる。しかし、次の上値目標となる
83.00円超えだが、先週は3回ほど同水準突破を試みたものの、実需売りやバリアオプショ
ンに跳ね返されるなど難所となっている。83円台をクリアしない限り戻り基調に入ったと
は言い難く、ここからが正念場となりそうだ。

ポンド円は「ベア」
英ネーションワイド消費者信頼感指数が52と予想の53を下回り約1年7ヶ月ぶりの低水準と
なったほか、アイルランドなど欧州PIIGS諸国の信用不安拡大を背景に株式市場が軒並み
大幅安となるなどリスク回避の動きから「ベア」となっている。年末を控えた、ドルキャ
リーの巻き戻しに加えて米国債の追加買い入れ規模を縮小する可能性から対ドルは上値が
重い展開が続きそうだ。しかし、欧州PIIGS諸国の債務懸念を嫌ってユーロからポンドへ
の資金シフトが加速しており、対ユーロでは上昇余地を試す展開が考えられよう。対円は
株価や商品相場の値動きに伴うリスク許容度の変化を見ながら対応していきたい。

豪ドル円は「ブル」
アイルランド危機の深刻化や株式市場の全面安、金・原油相場の大崩れを受けてリスク回
避の流れが強まり一時80.30円付近と高値より約2円以上水準を落とす場面もみられた。し
かし、大台80.00円は維持したことで安値では参加者の押し目を拾う動きが目立ち「ブル」
となった。テクニカル的には80.75円付近に掛かる25日間移動平均線が目先のサポートと
して機能するかが焦点となりそうだ。
 

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