FXレポート

追加金融緩和観測や為替介入を巡る思惑に神経質な展開か!?

昨日のドル円は東京市場序盤、先週末の政府・日銀による円高対策への期待感が一部で後退したことが重石となり、85.40円付近へと下落。その後も仙谷官房長官が菅首相と白川日銀総裁との電話会談を行なったことを明らかにしたものの、「為替介入の話はまったくでなかった」と述べたことが一部の失望を買い85.30円付近へと押し下げる展開となった。欧州市場に移っても序盤こそ米景気先行き懸念の強まりと日銀の介入警戒感が交錯し横ばいとなったものの、本邦高官の円高に対するコメントが具体性に乏しいことから、85.094円まで下値を拡大する展開となった。ただ、引けにかけては米10年物国債利回りが1年5ヶ月ぶりの低水準から上昇したことを背景に日米金利差の拡大を意識した買いや、来月7日の日銀の金融政策決定会合で金融緩和策が発表されることへの期待感が下値を支え85.202円で取引を終えた。

ユーロ円は先週タカ派として知られているウェーバー独連銀総裁の「ECBは銀行への無期限の資金供給を年末以降も継続すべき」とECBの金融緩和策長期化を示唆するハト派的な発言が、引き続きユーロのマイナス要因となったことに加え、日経平均の下落を受けてリスク回避の円買いが強まると東京市場中盤に108.45円付近まで下落。その後も菅首相・白川総裁の電話会談で為替介入について触れられなかったことに対する失望が重石となる中、東京市場終盤にかけて108円台中盤で上値の重い値動きとなった。また、欧州勢参入後もGLOBEXのNYダウ先物や欧州株が冴えない値動きとなったほか、独製造業PMI速報値が予想を下回ったことが嫌気され、108.30円付近へと下値を拡大した。欧州市場終盤からNY市場にかけても欧州の金融緩和が長期化するとの見方が意識されたことに加え、寄付きで高く始まったダウが下げに転じると、リスクを回避する動きからユーロ売りが加速し心理的節目である108.00円を下抜けたことでストップロスを巻き込み、107.712円まで下落した。引けにかても上値は重く107.858円で取引を終えた。

                    本日の展開

さて本日の展開だが、引続き日本の追加金融緩和観測や為替介入を巡る思惑に神経質な地合いとなるだろう。政府・日銀による円高対策への期待や介入警戒感がかろうじてクロス円の下支え要因となっているものの、日銀は「菅首相は白川日銀総裁に金融政策について何らかの要請といったことはない」と発言するなど日銀の臨時金融政策決定会合や追加金融緩和への過度な期待も後退しており、失望感から円が独歩高となる可能性も捨てきれない。また、ドル円では今夜米2年債370億ドルの入札が予定されているが、米国は景気悪化懸念やデフレ懸念、株安連鎖懸念が高まる中、安全資産としての米債券買いから利回りも一段と低下余地が広がってきている状況にある。先週は政策金利動向を反映する米2年債利回りが一時0.45%台まで低下しているほか、FF金利先物ではすでに来年末まで利上げが見送られる可能性を織り込んでいて、米債券利回りの上昇余地は限定的と予想することができよう。テクニカル的にも上値が切り下がる弱気パターンとなっており、85円を割れた場合は年初来安値の84.730円を意識した展開となりそうだ。

ユーロ円は世界的な成長鈍化懸念や金融市場の不透明感を背景に、ECBの出口戦略は来年第一四半期以降に持ち越しとなる可能性があるほか、欧州の債券利回り低下も一段と鮮明となっており、金利面からはユーロの下げ余地が広がっている状況にあろう。また、米格付け会社ムーディーズは「スペインの財政見通しを懸念しており、格下げもあり得る」と先週コメントしていることから、近く格下げが発表される可能性があることも気掛かりとなるところだ。テクニカル的には7月上旬以来のサポートライン109円台前半を割り込んでおり、テクニカル要因の悪化を背景に売り圧力が高まる可能性には留意しておきたい。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   84.50-86.00
ユーロ・円 106.30-109.00
ポンド・円 131.10-134.90

【今日の主な経済指標】
15:00 DEM  国内総生産
18:00 EUR  製造業新規受注
18:30 ZAR  四半期国内総生産
21:30 CAD  小売売上高
23:00 USD  リッチモンド連銀製造業指数
23:00 USD  中古住宅販売件数

≪2010年8月23日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ブル」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円 :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
米景気下振れ懸念などを背景に上値は引続き重いが、85.00円付近での底固さは健在で参加者も
「強気」だ。日銀の追加緩和観測は消えていないことから85円台前半では底固さも感じられるこ
とから、慎重に押し目を拾っていくのもいいだろう。しかし、政府・日銀による円高対策への期待が
空振りに終わった場合には、失望売りを呼び込むことも考えられることから、下値に対する警戒は
しておきたい。

ポンド円は「ブル」
先週末に英テレグラフ紙でシンクタンクが「2年以内に英国の政策金利は8%まで上がる可能性が
ある」との見方を示したほか、英サンデータイムズ紙が「米食品大手キャンベルが英菓子メーカーの
ユナイテッド・ビスケッツに対して15億ポンドの買収提案を検討している」と報じたことも材料視され
「ブル」。英景気指標は日米欧と比較すると堅調となっているものの、世界的株安でリスク許容度が
低下していることもあり、株価や商品相場の値動きに伴うリスク許容度の変化には注意したい。

豪ドル円は「ブル」
週末に実施された豪州総選挙で与党・労働党と野党保守連合のいずれも過半数議席を獲得できな
かったことから、早朝のシドニー市場では豪州の政局不安を背景に売りが先行、75円台後半へと
大きく窓を開けて始まった。オープン後に割安感から買いが殺到し「ブル」。政局不透明感が豪州
の金融市場に与える影響を、今後は慎重に見極めたいところ。また、米景気回復の遅れからドル
円が再び15年振りの安値水準へと下押しするような展開となれば、マーケットはリスクオフのムードに
支配され、オセアニア通貨は相対的に売られる展開も想定しておいたほうがよいかもしれない。

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