FXレポート

ハンガリー財政不安払拭できず! 方向感なく株価に翻弄

ドル円は、雇用統計が予想よりも弱い結果となった前週末の流れを引継ぎアジア株が急落、リスク回避先行となり安値90.975円まで急速に売られた。しかし欧州市場に入ると、東京市場で売られすぎとの警戒感から買い戻しが入り92.081円まで上伸したものの、その後は手掛かりに乏しく、NYダウも軟化したことなどから欧州時間までの買い戻し基調も一服となり、引けは91.391円と方向感の見えにくい展開となった。各国株価の上下動に翻弄される形で、引けに掛けてはジリ安となった。

ユーロ円は、ハンガリーで財政赤字拡大懸念が浮上したことでユーロ圏諸国に対する信用不安が再燃、市場には欧州不安が南欧から東欧まで波及するとの警戒感が拡がり、リスク回避によるユーロ売りが加速した。対円では一時108.066円まで下落し約4年ぶり、対ドルで約8年半ぶりの安値をつけたが、欧州時間に入ると、欧州の主要株価指数が下げ渋ったことに加え、NY原油先物に対する売りも弱まったためリスク回避的なムードが和らぎ、緩やかに買い戻され、110.293円まで上昇したが、引けにかけては再度下落基調となり108.921円で取引を終えた。


                                             本日の展開

ドルは、米雇用統計の結果が嫌気されFF金利引き上げ時期が後退したとの観測がにわかに高まりつつある。連邦準備制度理事会(FRB)の非公開会議だが、欧州不安に加え新たにハンガリー財政懸念も噴出する中では、公定歩合の引き上げは考えにくいとの認識が広がっているようだ。このことは昨日の株価動向に如実に現れており、日経平均株価の下げ幅は一時-398.57円まで拡大するなど9,500円の大台割れに迫る場面もみられた。他アジアの主要株式も急落、欧州株価も続落と冴えない状況。NYダウは前日の終値付近で推移していたが、引けにかけては下落に転じ、大引け9,816.49ドルと年初来安値を更新、2009年11月依頼の水準で下降トレンド入りが濃厚と考えられる。為替市場でもリスク回避色が鮮明でドル買い・円買いの様相だが、日本の貿易黒字の大きさなどが意識され円を買う動きがより強いように思われる。米国の強いファンダメンタルズは意識されつつも急激に高まったリスク志向の払拭にはきっかけが必要と考えられる。本日は注目されるイベントが少ないため、当面は下値模索の展開が予想される。

ユーロは、欧州圏の新たな不安要素であるハンガリーの財政懸念の火消しに躍起な様子が窺える。ハンガリーのミハリー・バルガ首相首席補佐官代行の発言によると「5月同国財政赤字は予想を上回る」「前政権は我々に間違ったデータを提供」と無過失のスタンスで財政赤字大幅拡大の可能性を認めながらも、「財政赤字削減の目標は達成可能」としている。ユンケル・ユーログループ議長もこれを支持し「現時点でハンガリーに問題があるとは思わない」と述べている。ストロス・カーンIMF専務理事も「ハンガリーに懸念材料は無い」と発言しており、判断が難しい状況。本日ハンガリー首相の国民に対する会見予定があるため、まずはその動向を見守りたい。一方、4月独製造業受注指数の結果は前月比+2.8%と、市場予想の同-0.4%を大きく上回るなど予想外の底堅さも見せた。ポジティブな材料だが、依然としてユーロの上値は重く、警戒感は根強いことからどちらに振れるかは見えづらい地合となっているため、積極的な売買は手控えられるかもしれない。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円  91.000- 93.400
ユーロ・円 108.000-113.000
ポンド・円 131.000-136.000

【今日の主な経済指標】

07:45 NZD 四半期製造業売上高[前期比]
08:50 JPY 国際収支・貿易収支
08:50 JPY 国際収支・経常収支
08:50 JPY マネーストックM2[前年同月比]
14:00 JPY 景気一致指数(CI)・速報値
14:00 JPY 景気先行指数(CI)・速報値
14:45 CHF 失業率
15:00 DEM 経常収支
15:00 DEM 貿易収支
15:00 JPY 景気ウオッチャー調査-現状判断DI
15:45 FRF 財政収支
15:45 FRF 貿易収支
16:15 CHF 消費者物価指数(CPI)[前月比]
19:00 DEM 鉱工業生産[前月比]
23:00 CAD 住宅着工件数

≪2010年6月7日クローズ時点≫

ドル・円     : 「ブル」
ユーロ・円   : 「ブル」
ユーロ・ドル : 「ブル」
英ポンド・円 : 「ブル」
豪ドル・円   : 「ブル」
NZドル・円   : 「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
先週4日に発表された5月米雇用統計は期待を裏切る結果となたったものの「ブル」のポジ
ションがとられており、米国ファンダメンタルズに対する期待は大きいようだ。米国債の
利回りは低下、為替も円高・ドル安とリスク回避が進んでいるが、日本の菅新首相は以前
にも円安思考を示していたことから、ドル買い安心感も広がっているようにも思える。し
かし、二番底三番底も常に想定しておく必要もあるだろう。

ユーロ円は「ブル」
メルケル独首相の銀行税導入発言がマーケットに一定の安心感を与えており、ポジション
は「ブル」。昨日メルケル独首相は「2012年からドイツ国内に銀行税を導入開始した場合、
年間約20億ユーロの歳入が見込まれる」と発言、前日から閣議を開いて財政赤字の削減や、
人件費を含めた支出削減なども検討している模様。赤字削減計画によると、今年度の赤字
は「700億ユーロ」、2014年までに「毎年100億ユーロ」の赤字縮小を見込んでいるが、過
度な引締めは経済活動を鈍化させるリスクも高めるため、慎重な姿勢で臨みたい。

ポンド円は「ベア」
ポンドは押し目買いが散見され、強い「ブル」となっている。しかし英国とユーロ圏は経
済的な結びつきが強く、先行き不透明なユーロ圏への懸念は引き続き重しとなるだろう。
ユーロは自国通貨安を享受しており、相対的にポンド高となるなか輸出産業への影響も懸
念材料で、英財政削減とともに厳しい状況の中、安易なナンピン買いとならないよう情勢
を見極めることが必要だ。

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