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移動平均線は、数多くあるテクニカル分析の中でもっとも有名で愛用者の多い分析手法です。1本もしくは複数のラインと組み合わせることで、値動きなど相場の状況を認識できるだけではなく、売買タイミングを計るシグナルとしても活用することができます。初めてFXに触れる初心者の方でも簡単に扱うことのできる一方で、FX中級者や上級者、多くのプロの投資家も使用している奥の深いおすすめのテクニカル指標です。
まずは、移動平均線とはどのようなテクニカル指標なのか、どのような計算に基づいて描写されるものなのか説明します。
移動平均線とは一定期間における終値の平均値の変化をチャート上にグラフで表したグラフのことを指します。通常のローソク足などのチャートに比べて滑らかに表現されます。テクニカル指標の中で最も基本的な指標で、愛用者は非常に多いです。海外においても「Moving Average」の名前で世界中のトレーダーが使用しています。
移動平均線はほかのテクニカルチャートにも応用されています。たとえばMACDでは短期の移動平均線と中長期の移動平均線が使用されていますし、ボリンジャーバンドは移動平均線と標準偏差で構成されています。
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移動平均線では、現在(過去)の相場が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかといったトレンドを把握しやすく、移動平均線の傾きでトレンドの勢いなどを視覚的に確認することができます。また、移動平均線は、算出期間(25日移動平均線であれば25日分)のマーケットポジションの平均コストを示しています。つまり移動平均線の水準よりも価格が上がったり下がったりすると、投資家が保有しているポジションの含み益が含み損に変わったり、逆に含み損が含み益に変わる水準として捉えることもできます。
さらに、移動平均線は、複数の異なる移動平均線の組合せやローソク足との組合せによって売買シグナルとして機能させることも可能です。
移動平均線を使用する際には、何日間の終値の平均値を使うのか、設定を行う必要があります。その際に設定する主な日数は以下の通りです。
短期線 | 中期線 | 長期線 | |
---|---|---|---|
日足(ひあし) | 5日 | 25日 | 75日または100日、200日 |
週足(しゅうあし) | 9週 | 13週 | 26または52週 |
月足(つきあし) | 12か月 | 24か月 | 60または120か月 |
計算に使用する対象期間が短い場合は、相場に敏感に反応するようになります。その一方で、大きな方向性が読みづらくダマシも多くなる特徴があります。
対して、対象期間が長い場合は、グラフの変動が緩やかになり長期的な推移を確認することができるようになります。ただし、短期の相場の変動を捉えられず、現在の値段とのかい離が激しくなり機動的な相場認識が難しくなる特徴があります。
次に具体的な移動平均線の計算方法を見ていきましょう。
移動平均線には計算方法の違いによって単純移動平均(SMA)や加重移動平均(WMA)、指数平滑移動平均(EMA)などがあり、単純移動平均が最も一般的とされています。
単純移動平均線は次の計算式で求められます。
n=設定日数 {直近の終値+1日前の終値+2日前の終値・・・+(n-1)日前の終値}÷n
例)5日移動平均線 (直近の終値+1日前の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の終値)÷5日
次は、移動平均線を売買の判断にどのように活用するのか詳しく見ていきましょう。
注目すべき重要なポイントは、移動平均線の向きとその角度にあります。まず向きですが、上向きの場合は上昇トレンドを表します。逆に下向きの場合は下降トレンドを表します。どちらともいえない横ばいの場合はもみあい局面を表します。その時の移動平均線の角度が急であればあるほど出来高が多く勢いが強く、トレンドが継続する可能性が高いことを示唆します。
加えて現在の価格が移動平均線に比べて上側と下側のどちらにあるかも確認するようにしましょう。上側にある場合は強い相場、買いの勢力が強い状況です。価格が下がった時に、移動平均線が下値支持線となるのか注目しましょう。下値支持線となり反発を見せた場合には、買いのシグナルと捉えて良いでしょう。逆に下側にある場合は弱い相場、売りの勢力が強い状況です。価格が上がった時に、移動平均線が上値抵抗線となるのか注目しましょう。上値抵抗線となり押し戻された場合には、売りのシグナルと捉えて良いでしょう。
なお、相場のトレンドを知る方法として、トレンドラインをひく方法もあります。ローソク足の安値と安値を線で結んでひく下値支持線と、ローソク足の高値と高値を線で結んでひく上値抵抗線から、相場のトレンドを読み解いたりトレンドの転換点の予測が可能となります。ただし、初心者の方はどの安値同士(または高値同士)を線で結べばよいか最初は迷うかもしれません。トレンドラインは手法こそ単純ですが、慣れるまでの間、何本も線を引いて試す必要があります。その点、移動平均線は最初からチャート上に線が描かれているため、描画で迷うことはありません。
期間の異なる移動平均線を複数組合せて使用することで、それらの位置関係からトレンドの変化をつかむこともできます。またそれを売買シグナルとして利用することも可能です。
移動平均線の組合せは、短期移動平均線と長期移動平均線、短期移動平均線と中期移動平均線など、具体的には、5日線と25日線、13週線と26週線の組合せが一般的です。では実際にどのような位置関係がトレンドの変化を表すのか見てみましょう。
・ゴールデンクロス
ゴールデンクロスは短期線が長期線を下から上へ突き抜ける状態のことを指します。上昇トレンド入りを表し、買いのシグナルとなります。相場の大勢が下値から上値へ目線を切り替えたことを示唆します。
・デッドクロス
デッドクロスは短期線が長期線を上から下へ突き抜ける状態のことを指します。下降トレンド入りを表し、売りのシグナルとなります。相場の大勢が上値から下値へ目線を切り替えたことを示唆します。
移動平均線の使い方をマスターした上で、さらに一歩踏み込んで活用するための方法「グランビルの法則」を紹介します。
グランビルの法則はアメリカのチャート分析家が考案した売買シグナルで、値段と移動平均線に注目して売りと買いのシグナルパターンが8つに分類されているものです。パターンごとにシグナルの確度や強弱がありゴールデンクロス/デッドクロスのみの分析を超えた精密な分析を行うことができます。
ただし、グランビルの法則やゴールデンクロス、デッドクロスなどは絶対的なものではないので参考程度にとどめておきましょう。移動平均線は過去の終値を参考にしているため、短期線であってもタイムラグのある遅行指標であることも留意しておくことが必要です。
移動平均線を使えるようになることで、取引手法の幅は一気に広がります。今の相場がどういう局面なのか、上昇下降どちらのトレンドが発生しているのかといった相場の環境認識だけでなく、売買シグナルとしても活用することができるためです。そして移動平均線をマスターしたあとはMACDなど他のテクニカル指標も併せて活用できるようになりましょう。そうすればトレードの勝率は飛躍的に上昇するでしょう。
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