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経済指標の中でも特に注目度の高いものの一つに、各国の政策金利発表があります。そもそも政策金利とは何か、どんな歴史を辿ってきたのか、そして為替相場にどのような影響をもたらすのか見ていきましょう。主要国の政策金利一覧および2024年の発表予定もご覧いただけます。
まずは、政策金利とは何か、という基礎知識からご説明しましょう。日本の金融政策の歴史についても、詳しく解説します。
政策金利とは中央銀行が金融政策を実行する上で設定する金利で、一般的に金融機関に向けて融資を行う際の金利を指します。日本では日本銀行(日銀)、米国では連邦準備制度理事会(FRB)が中央銀行として様々な役割を担っており、物価や通貨の安定を目的として行う政策を金融政策と言います。現在、日本では無担保コールレート(オーバーナイト物)を、米国ではフェデラル・ファンド金利(FF金利)の「誘導目標」を政策金利としています。
景気と政策金利にはどのような関係があるのでしょうか。経済活動の中で景気は循環しており、当然景気が良い時、悪い時があります。景気が良いときは経済の過熱感によるインフレ率上昇を抑える目的で中央銀行は政策金利を引き上げます。高い金利により企業は資金調達がしづらくなり、設備投資などの経済活動が抑制されます。逆に景気が失速している時はインフレ率低下を抑える目的で中央銀行は政策金利を引き下げます。企業は低い金利で資金を調達することで、設備投資などの経済活動が活発になります。
1994年に金利が自由化される以前は、日本銀行(日銀)は主に準備預金制度の「準備率」や「公定歩合(基準金利)」といった手段を用いて金融緩和や引き締めを行ってきました。ただ、公定歩合では景気調整に限界があることから、1995年以降日銀は無担保コールレート(オーバーナイト物)を目標とした「金利ターゲット方式」により金融市場の調整を行っています。日銀が金融市場で国債や手形を買い入れる「買いオペ」を実施することで市場に資金を放出し、逆に国債や手形を市場に売る「売りオペ」を実施することで市場から資金を吸収します。このように市場で国債や手形を売買することで短期市場金利を誘導することをオペレーション(公開市場操作)と言います。
1999年に日銀が無担保コール翌日物の誘導目標を史上最低である0.15 %に設定し、当時の速水日銀総裁が、「ゼロでもよい」と発言したことから、いわゆる「ゼロ金利政策」がスタートしました。2000年のITバブル景気により、日銀はゼロ金利政策を解除したものの、その後ITバブル崩壊を受けて2001年~2006年まで日銀は国内景気の下支えのため「量的緩和政策(QE)」を実施しました。2006年に「公定歩合」が「基準割引率および基準貸付利率」に改称され、これ以降公定歩合という言葉は使われなくなりました。2010年には当時の白川日銀総裁のもと、「量的緩和政策(QE)」に日銀がリスク資産(ETFやJ-REITなど)を買い入れる「信用緩和」を加えた「包括的な金融緩和政策」を開始しました。そして2013年安倍政権の経済政策「アベノミクス」のもと、黒田日銀総裁が金融緩和策強化のため「量的・質的金融緩和」を開始しました。金融市場調節の主たる操作目標は、「マネタリーベース」となり、日銀が買い入れるETF(上場投資信託)や国債、J−REITの具体的な購入目標額が定められました。この異例で大規模な金融緩和は「黒田バズーカ」とも呼ばれ、国内外で話題となりました。また2016年1月には、日銀の当座預金のうち「超過準備預金」部分に-0.1%のマイナス金利を導入することを決定しました。
2020年4月に日銀は国債の買い入れ額の上限撤廃と新型コロナウイルスの感染拡大による厳しい資金繰りに直面する企業を支援するための社債やCP(コマーシャルペーパー)の買い入れ上限を拡大する追加緩和を発表しました。
次に、政策金利が為替相場にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。この章の解説を読めば、FXを取引する投資家が政策金利に注目する理由がわかるはずです。
為替レートが動く重要な要因の一つに金利があります。これは世界の金融市場の中で資金が常に有望な運用先に移動する傾向があるからです。例えば2国間の政策金利に差がある場合は金利の低い通貨が売られ、金利の高い通貨が買われやすくなります。金融政策発表の中でも特に政策金利の注目度が高く、事前予想と異なる結果となった場合はマーケットが大きく動くことがあります。一般的に利上げは通貨が高くなる要因となり、利下げは通貨が安くなる要因となります。また、為替レートは将来の起こりうる事象も織り込みながら推移しているため、要人発言等により将来の利上げ・利下げ期待が強まる場面でも為替レートが大きく動くこともあります。こうしたことから、政策金利と為替レートには相関性があると言われています。
前述の通り、一般的に利上げは通貨が高くなる要因、そして利下げは通貨が安くなる要因となります。わかりやすい例として、2003年以降のオーストラリアの政策金利と豪ドル円の為替相場の変動が挙げられます。オーストラリアの政策金利はオーストラリアの中央銀行である豪州準備銀行(RBA)によって2008年にかけて7.25%まで引き上げられ、それに伴い豪ドル円も上昇しました。豪ドル円は高金利通貨の代表格として、個人投資家から人気の通貨ペアとなりました。しかしその後、リーマンショックによる景気低迷を避けるため、オーストラリアの政策金利は徐々に引き下げられました。一時的に引き上げられた期間もありましたが、2020年にはコロナショックの影響から政策金利は0.25%まで引き下げられました。その後、世界的なインフレの影響から政策金利の引き上げとともに、豪ドル円も上昇していることが下のグラフから見てとれるでしょう。
政策金利と為替レートの相関性がわかったところで、2024年の政策金利発表スケジュールをチェックしておきましょう。
2024年の1年間の政策金利発表予定をご紹介します。
国 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 23日 | 19日 | 26日 | 14日 | 31日 | 20日 | 31日 | 19日 | ||||
アメリカ | 31日 | 20日 | 1日 | 12日 | 31日 | 18日 | 7日 | 18日 | ||||
ユーロ | 25日 | 7日 | 11日 | 6日 | 18日 | 12日 | 17日 | 12日 | ||||
イギリス | 1日 | 21日 | 9日 | 20日 | 1日 | 19日 | 7日 | 19日 | ||||
オーストラリア | 6日 | 19日 | 7日 | 18日 | 6日 | 24日 | 5日 | 10日 | ||||
ニュージーランド | 28日 | 10日 | 22日 | 10日 | 14日 | 9日 | 27日 | |||||
カナダ | 24日 | 6日 | 10日 | 5日 | 24日 | 4日 | 23日 | 11日 | ||||
スイス | 21日 | 20日 | 26日 | 12日 | ||||||||
南アフリカ | 25日 | 27日 | 30日 | 18日 | 21日 | |||||||
トルコ | 25日 | 22日 | 21日 | 25日 | 23日 | 27日 | 25日 | 22日 | 19日 | 17日 | 21日 | 26日 |
メキシコ | 2日 | 21日 | 9日 | 27日 | 8日 | 26日 | 14日 | 19日 | ||||
チェコ | 8日 | 20日 | 2日 | 27日 | 1日 | 25日 | 7日 | 19日 | ||||
ハンガリー | 30日 | 27日 | 26日 | 23日 | 21日 | 18日 | 23日 | 27日 | 24日 | 22日 | 19日 | 17日 |
出所:日本銀行、FRB、ECB、BOE、RBA、RBNZ、BOC、SNB、SARB、TCMB、BOM、CNB、MNB ※2024年1月29日時点で判明しているスケジュール
政策金利や金利と景気の関係、為替レートには密接な関係があることについて触れてきました。FX取引をする上で政策金利を理解することは重要であり、トレードの戦略を立てる際にも非常に役に立ちます。各国の政策金利と為替レートの推移を比較してみることで、どのような局面で相関性が高いのか理解できるでしょう。また、アメリカの連邦準備制度理事会 (FRB)の将来の政策金利を予想するには、CMEグループが金利先物市場のデータを基に算出する「FedWatch Tool」もぜひ参考にしたいです。将来の利上げ・利下げを予想しながらトレードできるようになれば、あなたも一人前のFXトレーダーと言えるでしょう。
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