FXレポート

年度末に向けて、駆け込み的なレパトリに注意!

金曜日のドル円だが、東京市場では新規材料難となったほか、週末ということもあり模様眺めムードが強く概ね81.00円を中心とした上下10銭以内の極めて狭いレンジでこう着が続いた。その後、欧州市場ではロンドンフィクシングにかけてまとまった規模のドル買いが入るとの観測から、全般的にドル買いが優勢になったことが波及し、81.25円付近まで浮上した。しかし、NY勢参加後は米10年物国債利回りが低下すると日米金利差縮小を意識した売りに押されて下落したほか、欧州株やNYダウが上げ幅を縮小しクロス円の下落につれた売りも出たことで一時80.875円と日通し安値を更新した。もっとも、売り一巡後は政府・日銀の介入警戒感が引き続き意識されていることに加え、10-12月期の米国内総生産(GDP)確定値が市場予想平均を上回ったことが下支え要因として意識され81円台を回復した。また、引けにかけてプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁が「政策当局は近い将来出口戦略が必要になるだろう」「米経済は勢いをつけており、経済基盤は頑固だ 」 と強い米経済と量的緩和の「出口戦略」について言及したことで、ドルが主要通貨に対し一時81.50円付近まで急騰した。その後も高値圏を維持し81.371円で取引を終えた。

ユーロ円は、東京市場序盤に米格付け会社S&Pがポルトガルの格付けを「A-」から「BBB」へと引き下げ、今後も引き下げ方向で見直すと発表したことを受けて、ややユーロ売りが強まり114.70円付近へと下落。しかし、既に米格付け会社ムーディーズや英米系格付け会社フィッチが同国の格下げを発表していたこともあり、影響は限定的になると、その後は手掛かり難となり114.80円付近で小動きが継続した。欧州勢参加後は、独IFO景気動向指数が111.1と予想の110.5から上振れしたことを受けてユーロ買いが強まったことで115.00円付近まで小幅上昇した。ただ買い一巡後は欧州の大手清算機関であるLCHクリアネットがポルトガル国債を担保適格資産から除外するとの見解を示したことや、メルケルドイツ首相が「ユーロが過去の過失から回復するのには、数年かかるだろう」などと述べたことなどが嫌気され114.50円付近まで反落した。NY時間ではドル円の上昇が下値を支える形となり下値は限定的となったものの、引けにかけて手掛かり材料難から安値圏でのもみ合いとなり114.604円で取引を終えている。

                              今週の展開

今週は3月31日の決算期末に向けて、最後の駆け込み的なレパトリが出やすい上、生損保、機関投資家、金融機関などが期末レートで円転する可能性は否めず、バイアスはやや円高方向となりそうだ。また、野田財務相は「介入時に比べれば為替相場は落ち着いてきている。介入は一定の水準の時ではなく、過度な変動があった時に実施する」と発言しており、ドル円は81.00円付近での介入警戒感は後退する可能性が高いとみる。ただ、80.50円付近まで下落した場合には準公的資金の買い注文がみられていることや、米FRB要人から米経済の強気の発言が続いており「出口戦略」への思惑が高まる可能性もあるため、突っ込んだ下値攻めは強い警戒感が伴うだろう。

尚、米経済指標としては、個人所得・米住宅販売保留指数(28日)S&Pケースシラー住宅価格指数・米消費者信頼感指数(29日)チャレンジャー人員削減数・ADP全米雇用者数(30日)週間新規失業保険申請件数・シカゴ購買部協会景気指数・米製造業新規受注(31日)米雇用統計・米ISM製造業景況指数(1日)などが発表される。また、日本では1日に3月日銀短観の発表が予定されているが、震災の影響がどの程度に反映されるかが大きな焦点となり、原発問題で計画停電が続くなか、予想以上の悪化となれば円売り要因となるだろう。

ユーロはポルトガルでソクラテス首相が辞表を提出する事態となり、政局の混乱が金融市場の信用不安に繋がり、大手格付け会社は揃ってポルトガルに対するリスクが高まったとして、格付けを引き下げ、見通しも「ネガティブ」と発表しており、欧州の財政問題がユーロの足枷となる可能性もあるだろう。ただ、欧州の当局者が、ポルトガル救済の費用は最大で計700億ユーロとなる公算だと伝わるなど、具体的な金融支援の規模について言及したことで、EU首脳はポルトガルの債務危機をコントロールできるのでは?といった楽観的な見方も広がっている。逆にこれ以上のネガティブ要因がでなければ材料出尽くし感から市場の関心が再びECBの利上げ期待に向かい、ユーロ上昇の可能性もあるだろう。また、25日のシカゴ・オプション市場(CBOE)では恐怖指数が一時17.00付近まで低下するなど、過度のリスク回避の動きも想定しにくく、テクニカル面でも5日移動平均線やチャネルシステムの高値支持帯である114.60円付近を明確に下回らないかぎり、まだ上昇トレンドと考える事ができよう。

[今週の予想レンジ]
ドル ・円   80.00-83.00
ユーロ・円 111.00-117.00
ポンド・円 128.00-136.00

【今週の主な経済指標】
3月28日  
21:30 USA   個人所得 
21:30 USA   個人支出 
21:30 USA   PCEコア・デフレータ    

3月29日  
6:45  NZL   四半期製造業売上高
6:45  NZL   貿易収支
8:30  JPN   完全失業率 /  有効求人倍率
17:30 GBR   四半期GDP 
17:30 GBR   四半期経常収支
22:00 USA   S&P/ケースシラー住宅価格指数 
23:00 USA   CB消費者信頼感指数

3月30日  
6:45  NZL   住宅建設許可 
8:50  JPN   鉱工業生産  
18:00 EUR   業況判断指数
21:15 USA   ADP民間雇用者数

3月31日  
8:01  GBR   GFK消費者信頼感調査
9:30  AUS   小売売上高 
9:30  AUS   住宅建設許可  
15:00 GBR   ネーションワイド住宅価格 
16:55 GER   失業率 /  失業者数増減 
18:00 EUR   消費者物価指数  
21:30 USA   新規失業保険申請件数 
22:45 USA   シカゴ購買部協会景気指数
23:00 USA   製造業受注 

4月1日  
8:50  JPN   四半期日銀短観
9:30  AUS   小売売上高 
17:28 GBR   製造業PMI
18:00 EUR   失業率
21:30 USA   非農業部門雇用者数 /  失業率(雇用統計)
23:00 USA   ISM製造業景況指数
23:00 USA   建設支出 

≪2011年3月25日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
政府・日銀による介入期待に加えて、プロッサー・フィラデルフィア連銀総裁が
「政策当局は近い将来出口戦略が必要になる」「当局は利上げとともに資産売却
計画を提示すべき」と発言したことによって「出口戦略」期待が高まり「ブル」
となっている。流れとしては18日の日米欧による円売り協調介入から1週間が経
過し、戦後最安値を付ける荒れた相場から静かな展開に様変わりしており、当面
はもみ合いが続く可能性があるだろう。テクニカル面でもボラティリティーが低
下したことで膠着状態が続いており、短期的にはこのレンジを中心とした値動き
が想定される。上値は25日移動平均線がさしかかる81.70円付近がレジスタンス
になり、下値では介入実施後の安値である80.50円付近が意識されそうだ。相場
がある程度、動いてくれないことには手の出しようがなく、リズムが出掛かるま
でここは様子見が無難だろうか。

ポンド円「ブル」
日足一目均衡表雲下限が位置する130.20円付近がサポートとして意識され同水準
では押し目買いが散見し「ブル」となっている。先週英2月消費者物価指数(CPI)
が市場予想を大幅に上回る内容となったことから英利上げ観測が高まる結果とな
ったが、その後公表された英金融政策委員会(MPC)議事録でこれまでと同様に、
センタンス・デール・ウィール委員以外に利上げ票を投じた委員はいなかったた
め利上げ期待は剥落している。加えて、英国は成長率見通しを下方修正している
ほか、今年度の財政赤字を1460億ポンドと予想するなど、経済および財政状況へ
の懸念が拭えない。英国経済が利上げに耐えられる状態にあると判断するには時
期尚早と考えることもでき、バイアスはやや弱気にかかりそうだ。

豪ドル円「ブル」
陽線引けとなり割高感があるものの、絶対的な金利差を背景に「ブル」は継続し
ている。ユーロは高債務国の信用不安、ポンドは英早期利上げの剥落、ドルは米
景気鈍化懸念と長期金利低下、円は震災の影響といった要因から消去法的に豪ド
ルが物色される可能性があるだろう。また、シカゴ通貨先物のポジションも7万枚
近くあったロングが5万枚割れまで減少するなど、ポジション調整が進んだことで
新たに買い余力が生まれていることも豪ドルにとっては支援材料となりそうだ。

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