FXレポート

ユーロ大幅反発も燻る欧州ソブリンリスク

昨日のドル円は東京市場序盤、主要指標の発表も少なかったことから動意の乏しい展開となり、83.20円付近でのもみ合いスタートとなった。仲値公示にかけて本邦輸入勢による買い観測に加えて、日経平均が前日比100円超の上昇となり、リスク選好の動きが強まったことから83.35円付近へと強含んだものの、 83円ミドルでは本邦輸出企業の売りも厚く、徐々に値を下げる展開となった。欧州勢参加後は、明日に期日を迎える83.70円付近の大口オプションバリア売りが意識されたことや、日足ベースで一目均衡表の雲の中に入り込んだことでテクニカル的な地合いに押され一時83.099円まで押し戻された。ただ、NYの取引時間帯に入ると米フィラデルフィア連銀が発表した11月の製造業景気指数が22.5と市場予想(5.0)を大幅に上回ったことでドル買いが強まり、米長期金利の上昇に伴う円売り・ドル買いも出て、10月5日以来の高値となる83.779円まで上値を拡大した。引けにかけてはコチャラコタ・米ミネアポリス連銀総裁が「量的緩和は正しい方向への措置であり、決定を支持した」と言及したほか、ピアナルト・米クリーブランド連銀総裁も「量的緩和第二弾の結果に勇気付けられる」と述べ、量的緩和を支持する内容の発言から小幅に反落し83.528円で取引を終えた。
   
ユーロはアイルランドの銀行融資について同国政府とEU・ECB・国際通貨基金(IMF)の専門家チームとの協議が開始される見通しとなるなど、アイルランド支援への期待感を背景にユーロ買いが優勢となった上、アジア株式市場が反発に転じると、東京市場終盤にかけて対ドルは1.3610ドル付近、対円も113.20円付近へと上昇した。さらに欧州市場に入ると欧州株が上昇して始まり、GLOBEXのNYダウ先物も一段高となったことを背景に、対ドルは1.3620付近、対円も113.40円付近まで上値を拡大。NY時間も勢いは止まらずホノハン・アイルランド中銀総裁が国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)から大規模な財政支援を受けるとの考えを示したと伝わると、アイルランドの財政不安が一段と和らぎユーロ買いが先行、対ドルは1.36ドルを回復し対円は一時114.10円まで上値を伸ばした。引けにかけても高値圏でもみ合いが続き終値は1.36428ドル、113.948円となった。

                             本日の展開

米下院で多数派となった共和党は、FRBの国債買い入れはドルの急落やインフレ、資産バブルにつながるとして厳しく批判した。こうした共和党の動きが直ちに国債買い入れの停止につながるとは考えにくいが、大規模な量的緩和に対してはFRB内部でも異論は多く、量的緩和第三弾の可能性は後退したとの見方もできる。さらに、昨日発表された米国の11月フィラデルフィア連銀指数は22.5と市場の事前予想(5.0)を大きく上回り、2009年12月(22.50)以来の高水準を記録した。構成項目も軒並み強く、特に新規受注(-5.0→10.4)雇用指数(2.4→13.3)の伸びが大きく、こちらも米金融緩和姿勢を大きく後退させる材料となりそうだ。テクニカル面では、今週壁となっていた83.50円付近を上抜けたことで次は心理的節目となる84円台にトライする展開が予測される。ただ、日足一目均衡では現在雲の中心に位置しており、今後雲が82.00円-83.00円付近に垂れ下がって来るため、このまま雲にのまれる展開となれば調整局面入りとなりそうだ。

ユーロはEUとIMFがアイルランドの銀行の帳簿精査を開始、同国の銀行救済に向けて大規模な財政支援の見方が浮上したことでひとまず下げ渋る展開となっている。しかし、アイルランド危機は、政府の債務問題と民間銀行の経営問題が混在しているため複雑で根が深い。CDS市場でもアイルランド国債のスプレッドのほかスペイン国債とポルトガル国債のスプレッドも拡大するなどソブリンリスクが派生するリスクもくすぶっている。また、アイルランドなど債務国に対する救済に資金供給をしたとしてもECBは「出口戦略」を大きく後退させる懸念もあり、どちらに転んでもユーロ安の口実となる可能性は否定できない。ただ、テクニカル面では短期的な抵抗帯とみられた5日と25日間移動平均線113.10円付近を明確に上抜けたことで地合は悪くない。好悪材料が入り混じる中、本日欧米で予定されている複数の要人発言次第でどちらにでも動けるように柔軟姿勢で臨むべきだろう。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   82.70-84.20
ユーロ・円 110.80-114.50
ポンド・円 131.50-135.50

【今日の主な経済指標】

13:30 JPY 全産業活動指数

16:00 DEM 生産者物価指数

≪2010年11月18日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ベア」
 豪ドル・円  :「ベア」
 NZドル・円  :「ベア」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
フィラデルフィア連銀景気指数が予想外に強い内容となったことで、米国債利回りが
上昇し「ブル」優勢となった。テクニカル面では一時83.779円まで上昇したことで介
入後の9月20日から11月1日の下降フィボナッチ61.8%戻しを達成した。到達感から戻
り売りのターゲットとなりやすいが、この水準に置かれる売り注文をこなして、84円
台へ乗せることができるかどうかが目先の焦点となりそうだ。

ポンド円は「ベア」
10月英小売売上高を始めとする一連の経済指標がまずまずの結果となって一時134.20
0円まで上昇したが、キング英中銀総裁が、英追加緩和の可能性を示唆したことや、1
34円台で逆張り系参加者の売り注文が殺到したことで「ベア」となっている。10月25
日につけた安値127.202円から約7円近く上昇しており、来週木曜日の米感謝祭に向け
て手仕舞い売りがピークを迎える可能性があり、ダウンサイドリスクが高くなりそう
だ。

豪ドル円は「ベア」
中国の金融引き締め懸念や欧州財政問題などを背景に新規買いポジションを手控える
参加者が多く売り買いが拮抗した。僅かに「ベア」が優勢となったものの、難しい局
面が続きそうだ。バタリーノ豪準備銀行副総裁は「豪ドル高は経済の調整を支援する
」と述べるなど豪ドル高を容認しており、豪準備銀行の利上げ余地はまだ残っている。
しかし、積み上がっていた豪ドルロングの巻き戻し局面にあり、金や原油など実物資
産に流入していた資金がドルに還流すれば資源国通貨も見切り売りが強まる可能性も
あるだろう。

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