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日本でも馴染み深い国、オーストラリア。南半球最大の大陸国家で、グレート・バリア・リーフやエアーズロックといった世界遺産も観光地として人気があります。観光産業とともに、オーストラリアはその豊富な鉱物資源による貿易が同国経済を牽引しており、その主な取引先は目覚ましい経済発展を遂げた中国となっています。
オーストラリアは、その国旗のデザインからもわかるようにイギリス連邦加盟国であり、イギリスはもちろん隣国のニュージーランドとの結び付きが強いことも特徴のひとつです。そのため、政治や金融政策において似たような態度を示す場面が見受けられます。また、住民の約2割が移民で占められており、そのなかでも中国などアジア系移民が多いことでも有名です。
さて、オーストラリア経済に目を移すと同国経済は2018年までの28年間にわたり年度単位でのプラス成長を実現してきています。ですが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大やドル需給問題などの影響によって2020年の経済成長率はマイナスに転じてしまいました。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた初期から財政・金融双方において大胆な支援策を打ち出したことによって同国経済は他国と比べ悪化せず、結果的に早い段階でコロナショック以前の水準を回復するとその後も着実な成長を続けています。
オーストラリアドル(以下、豪ドル)は、米ドル・ユーロ・円・ポンドに次いで世界でも5番目に取引量の多い通貨です。そして先にも述べたように、豊富な鉱物資源を有することから資源国通貨と呼ばれており、その代表格として人気を集めています。
かつては高金利通貨として投資家から人気を集めましたが、政治面や経済面での不安要素が少なく、比較的カントリーリスクの低い通貨としてみられています。
(出所)BP 「Statistical Review of World Energy」
資源国通貨としての特色が色濃い豪ドルですが、鉄鉱石やボーキサイトといった鉱物資源に加え、石炭や天然ガスといったエネルギー資源の商品相場に連動して為替相場が影響を受けます。もちろん、同国の経済においてもこれら資源貿易は重要な位置を占めており、商品相場の値動きがオーストラリア経済に与える影響は非常に大きいと言えます。
(出所)ブルームバーグ
また、オーストラリア経済と強い結び付きのある国、中国の経済動向にも豪ドルは影響を受けやすいという特徴があります。世界の工場たる中国が経済的発展を遂げる。その過程で大量の鉱物資源が消費される。鉱物資源が貿易のトップ品目であること、輸出のその多くが中国相手であることなどから、オーストラリアは影響を受けてしまうのです。
豪ドル相場の見通しを予測するうえで、オーストラリア経済の指標チェックは欠かせません。なかでも、オーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia 以下、RBA)が発表する政策金利や声明文は非常に高い注目度を集めます。
RBAはオーストラリアを見舞ったコロナショックに対応し、その経済支援の一端として政策金利を過去最低の0.10%まで引き下げました。RBAが注視していたインフレ率や失業率などが改善していることから、2022年5月の金融政策決定会合で利上げに転じました。その後は一時停止を挟みながら2023年6月会合まで利上げを継続し、2023年8月時点の政策金利は4.10%となっています。
現在は金利を据え置いていますが、インフレ動向とRBAの金融政策の行方が今後の注目ポイントです。
世界的に大きなダメージを与えてきた新型コロナウイルスの蔓延による経済活動の停滞。そのコロナショックからいち早く立ち直りつつあるオーストラリア経済を底支えしているのが鉄鉱石に代表される鉱物資源、液化天然ガス(以下、LNG)に代表されるエネルギー資源の輸出にあります。
近年は世界的にコモディティ価格が堅調に推移していますが、この流れは中長期において各国の金融政策の変化などを受け次第に落ち着いていくと想定されています。したがって、オーストラリア経済の成長見通しが堅持されれば、豪ドル/円相場は比較的落ち着いた値動きとなりそうです。一方、昨今のウクライナ情勢の影響を受けて商品相場のボラティリティが高まっているため、資源価格が変動する局面では豪ドル/円相場への影響に注意したいです。
(出所)ブルームバーグ、豪州準備銀行
コモディティ価格の上昇による貿易黒字は中国需要に依るところが大きいため、中国国内の経済動向や豪中関係の政治的変化にも気を配る必要があります。
現在の中国経済ですが、その足元は今まさに正念場を迎えているといっても過言ではないでしょう。2020年のコロナショック以降、初期段階では迅速なロックダウン(都市封鎖)やワクチン接種の進展から早期の経済立て直しに期待がかかりました。ただ、2022年には「ゼロコロナ政策」の元、上海など主要都市を含む大規模な封鎖措置によって景気後退懸念が広がりました。
足元では、不動産市場の低迷など新たな懸念材料が出ており、徐々に影響が表面化してくる可能性は否定できません。一方で、景気底入れのため機動的に利下げ対応なども行っているほか、見通しを大きく曇らせてきた「ゼロコロナ政策」が2023年2月に遂に終了した今、今後の経済動向にも目を向けてみたいです。
世界各国のロシアに対する経済制裁強化により、ロシア産エネルギー資源禁輸の懸念が資源価格上昇を引き起こし、電力といった我々にも身近なところで影響が現れつつあります。オーストラリアは液化天然ガス(LNG)の輸出シェアが産油国カタールを押さえ第1位(2021年度)であり、世界情勢がより一層の“脱ロシア”へと加速した場合、ロシアに代わる新たな調達先としてのニーズを満たすかもしれません。
豪ドルの上値余地を探る上では、RBAによる金融政策の動向が最大の焦点となりそうです。RBAは2020年11月に政策金利を同国史上最低値となる0.10%に引き下げましたが、2022年5月の会合で利上げに踏み切りました。2023年4月の会合で利上げを停止したことで、10会合に及んだ連続利上げがストップしたものの、翌5月にはインフレの上振れリスクなどを理由に利上げを再開、予想外の決定でマーケットを驚かせました。現在は金利を据え置いていますが、声明では今後更なる引き締めの可能性に含みを持たせており、インフレや経済動向を注視していきたいです。
また、2023年9月からはロウRBA総裁の任期満了に伴い、現在副総裁を務めるミシェル・ブロック氏が新総裁に就任予定です。RBA初の女性総裁で任期は7年間となり、スタンスや舵取りの行方に注目が集まります。
(出所)ブルームバーグ
豪ドル相場を見通す上で最も注目したい指標が、RBA金融政策発表です。RBAは現在の金利据え置きによって、同国の金融政策は新たなフェーズに移行している局面といえるでしょう。現時点でインフレ率はRBA物価目標である年2~3%のレンジを依然上回っていることから、当面は現行の金利水準の維持が見込まれますが、今後は声明等の内容に注目しつつ、指摘されるインフレリスクや経済の不確実性などの要素を見定めていく必要があるでしょう。
(出所)ブルームバーグ
また併せて、毎月公表される豪雇用統計も押さえておきたいです。直近は豪州国内の労働市場のひっ迫や、最低賃金の引き上げなどによる賃金上昇を背景に、特にサービス価格の高止まりがインフレに影響を及ぼしています。対して、コロナショックで一時悪化した失業率は改善を続け、およそ50 年ぶりの低水準で推移しています。雇用者数や失業率のデータはRBAが非常に重視しているデータで、これらの変化に着目することで、今後のRBAの金融政策や豪ドル相場を見通すヒントが見えてくるかもしれません。
オーストラリアの経済指標カレンダーです。今後の予定を抑えておきましょう。
かつては高金利通貨の代名詞であった豪ドル。現在でも個人投資家からの人気は健在で、2022年の国内の個人投資家における取引金額割合では3位の人気を誇っています。「みんなのFX」では、豪ドル/円のスプレッドが0.6銭(AM8:00~翌日AM5:00 原則固定(例外あり))と低コストでお取引いただけます。また、オーストラリアの政治経済や、チャートのテクニカルポイントに関するニュース配信も豊富ですので、豪ドル/円のお取引は「みんなのFX」のご利用をぜひご検討ください。
なお、先述の通り、豪ドル/円の値動きやスワップポイントの変動は、鉱物資源の需要に左右される傾向が強いため、世界経済や中国経済の動きに影響されます。また国内景気や、インフレ動向を判断するRBAの政策金利・声明文もしっかりウォッチしながら取引すると良いでしょう。
(2023年8月時点 トレイダーズ証券 市場部)
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トレイダーズ証券市場部為替ディーラー
日々、海外のニュースやチャートをチェックし、インターバンク市場にて外国為替の取引をしている、トレイダーズ証券 市場部所属の為替ディーラーが、この記事を執筆しました。
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