FXレポート

ギリシャ問題は融資実行額が焦点に、早期決着は困難か!

昨日のドル円は、東京市場序盤に発表された本邦5月貿易収支が予想より赤字幅が拡大したほか、5・10(ゴトー)日とあって仲値に向けた買いも散見されたが、上値を買っていく材料が乏しく80.20円付近の狭いレンジでのポジション調整に終始した。しかし、欧州勢の参入にともなってギリシャの支援策や政局不安からくるユーロ主導の動きから株式相場や商品市況の弱含みの展開に徐々にリスク回避姿勢の円買いが強まり、一時80.095円まで下落し大台割れを意識した動きとなった。NY時間では欧州主要株価指数やNYダウ先物の下げ幅が縮小、WTI原油先物が上昇したことなどを背景に、リスク回避姿勢が後退しことで円売りが優勢の流れとなり、下げ幅を埋めて80.260円で取引を終えている。

ユーロ円は、19日のユーロ圏財務相会合で、ギリシャの次回融資について7月に結論が先送りされたことを受け、ギリシャ政治情勢の不透明感からユーロ売りが加速し、東京市場では114.30円付近まで下押した。欧州勢参加後も、欧州主要株価指数も取引開始から売りが先行し金融市場全般でリスク回避姿勢の動きが強まるとストップロスオーダーを巻き込み113.597円と安値を更新。しかし売りが一巡した後は、欧州主要株価指数やNYダウ先物の下げ幅が縮小したほか、ギリシャ野党・新民主主義党党首の「税制改革に応じるなら財政削減の話を進める用意がある」との発言が伝わったことで、ギリシャの政局不安が和らぐのではないかとの見方から、利益確定のユーロの買戻しが入り114円台を回復。また、ユンケル・ルクセンブルク首相(ユーログループ議長)が「財務相らは欧州安定メカニズム(ESM)について合意した」「ギリシャ国債のロールオーバーは自発的なものとなる」などの発言が伝わり、欧州債務危機が和らぐとの見方からユーロ買いを誘い一時114.984円まで続伸し、114.804円で取引を終えている。

                         今日の展開

ドル円は、ミシガン大学消費者信頼感指数、NY地区連銀製造業景気指数、フィラデルフィア地区連銀製造業景況指数が予想を大幅に下回る結果となるなど、米景気の減速傾向は依然続いていることから地合は悪く、本日も80.00円割れを試す展開となろうか。しかし、同水準では本邦輸入企業や、個人投資家が下値を支えているほか、22日のFOMCを控えて様子見ムードも強く、一方にポジションを傾けるには注意が必要だ。チャートを見ても昨日の値動きは上下30銭と膠着感は強く、上値は引き続き日足一目均衡表の雲下限(80.90円付近)、基準線(80.96円)5月24日→6月8日の下降フィボナッチ50%戻し(80.95円)、25日移動平均線(80.85)が立ちはだかることを考えれば81円超えは容易ではなさそうだ。一方の下値も80.00円の攻防に敗れてもボリンジャーバンド-2σやの差し掛かる79.70円付近では底堅い展開が予測されるほか、同水準ではダブルボトムを形成する可能性があり、サポートとなりそうだ。

ユーロは、先週ギリシャ支援策を巡って対立が続いていたドイツとフランスとの間で、メルケル独首相とサルコジ仏大統領の首脳会談が開かれ協調することで同意したが、19日のユーロ圏緊急会合では第1次支援の第5弾となる120億ユーロの融資や追加の支援策の決定は先送りされた。そのためユーロ圏の財務相は、ギリシャに対し財政赤字削減と国有資産売却に必要な法律の議会通過を要求しており、21日の法案の議会通過に必要な過半数を確保できるかが大きな焦点となっている。仮に信任決議されても過半数に達しない場合は、解散・総選挙になると考えられ、その場合財政再建策の決議は9月頃までずれ込み追加支援も先送りされる可能性もあり、ギリシャ債務問題が潜在的なダウンサイドリスクを常にかかえていることは留意しておきたい。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円  79.00-81.00
ユーロ・円 113.00-116.00
ポンド・円 128.00-132.00

【今日の主な経済指標】
10:30 AUD 豪準備銀行(中央銀行)、金融政策会合議事要旨公表
13:30 JPY 全産業活動指数[前月比] 4月
16:00 ZAR マネーサプライM3[前年同月比] 5月
17:00 ZAR 四半期経常収支 1-3月期
17:30 HKD 消費者物価指数(CPI)[前年比] 5月
18:00 DEM ZEW景況感調査(期待指数) 6月
18:00 EUR ZEW景況感調査 6月
19:00 ZAR 四半期 南アフリカ経済研究所(BER)消費者信頼感指数 4-6月期
21:30 CAD 景気先行指数[前月比] 5月
21:30 CAD 小売売上高[前月比] 4月
21:30 CAD 小売売上高(除自動車)[前月比] 4月
23:00 USD 中古住宅販売件数[前月比] 5月
23:00 USD 中古住宅販売件数[年率換算件数] 5月

≪2011年6月20日クローズ時点≫
ドル・円   :「ブル」
ユーロ・円  :「ブル」
ユーロ・ドル :「ベア」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円  :「ブル」
NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
22日に開かれるFOMCや、本日行われるギリシャ改造内閣への信任投票の行方を
見極めたいとして参加者のポジションに大きな変化はなく「ブル」が継続され
ている。FOMCでは政策金利を0.00%~0.25%に据え置くとともに「異例の低金
利を長期間続ける」との文言も維持する見通しだが、米国経済がソフトパッチ
(景気の一時的後退)であることでバーナンキFRB議長が一段とハト派的な見
解を示す可能性があり注意が必要となろう。また、ギリシャ債務不履行問題の
早期決着が困難となった場合も安全資産の米国債に資金が流入する可能性が高
く、米国10年債利回りがもう一段低下する場合は注意が必要だ。

ポンド円「ブル」
欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の保証枠を現在の4400億ユーロから7800
億ユーロへ拡大して合意したことが好感されたほか、NYダウが12000ドルに回
復するなどリスク許容度も改善したことで「ブル」となっている。明日は6月
分の英金融政策委員会議事録が公表されるが、利上げに関してはタカ派の急先
鋒だったセンタンス委員が退任したため、今回から新しく委員に加わったブロ
ードベント氏がどのような投票行動を見せたのか注目が集まる。同氏は先月の
指名公聴会で「時にはタカ派的であり、時にはハト派的だ。常に同じ方向を向
いているとは思わない」と述べており、判断は難しい。ただ、英5月雇用統計
で失業者数が予想以上に増加した上、英5月小売売上高指数が予想を大幅に下
回った事を鑑みて金利据え置きを支持したハト派寄りのスタンスをとった可能
性が強いだろうか。

豪ドル円「ブル」
NYダウの上昇や、時間外取引でWTI原油先物上昇を好感して「ブル」は継続さ
れている。経済成長の鈍化による資源需要の減少といった流れと中国株式の下
落が豪ドルの下落を後押しており、こうした中で本日公表されるRBA議事録の
内容には注目が集まっている。早期利上げのニュアンスが感じられなかった6
月7日の声明文の裏側で、RBA(豪準備銀行)スティーブンス総裁の発言内容の
ように近い将来の利上げに関する議論が進んでいた事が明らかになれば、84円
台前半を下値に反発に向かう可能性が高い一方で、議事録が比較的ハト派な内
容となれば、早期利上げ期待の後退とともに新たな下値水準を模索する展開に
なる可能性もあろう。

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