FXレポート

米「出口戦略」のタイミングは?

昨日のドル円は序盤、先週のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録において「出口戦略」について討議されたことが引き続き追い風となっているほか、仲値に向けたドル買いが観測され82円前後まで上昇した。しかし、買い一巡後は欧州の高債務国の財政問題が意識され米長期国債利回りが低下したことや、中国購買担当者景気指数が悪化し、上海総合が下落すると欧州株にも株安が連鎖してリスク回避の円買いが優勢になり欧州市場序盤に81.323円まで軟化した。その後、米長期国債利回りの低下幅縮小をきっかけに短期勢からショートカバーが散発的に入り81.85円付近まで持ち直したが、引けにかけて、再び米長期国債利回りの低下幅縮小の動きが強まると日米金利差拡大を意識した買いが観測され日通し高値の82.034円を更新し81.988円で取引を終えた。

ユーロ円は、米格付け会社S&Pがイタリアの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げたことが材料視され、東京市場序盤から軟調な展開となった。その後、日経平均やアジア株式の下落に加えて、取引時間外のNY原油先物の軟調推移を背景にリスク回避の円買いが優勢になると115円付近まで下落。欧州勢参入後にも、EU各国の財政問題を背景に欧州株が下落するなど株安連鎖に嫌気し、円買いユーロ売りが強まると113.875円まで下げ幅を拡大した。しかし、売りが一服するとショートカバーが散発的に入り114.65円付近まで回復。NY市場に入ると特段材料は見当たらなかったものの、引けにかけて米株式が下落幅を縮小したことから、リスク許容度が改善し円売りが強まると115.191円まで下げ幅を回復し取引を終えた。
 
                            今日の展開

ドル円は、安全通貨のドルと円が同じ方向に動くため、リスク選好局面では「ドル売り・円売り」、リスク回避局面では「ドル買い・円買い」と方向感がつかみづらく、レンジ取引が続くことがメインシナリオとなろうか。しかし、FOMC議事録では「出口戦略」について具体的な議論が進展している跡が明確に見て取れ特に「過半数のメンバー、資産売却前に利上げを選択へ」との一文は、利上げを先行させるとの見方がコンセンサスになりつつある。本日もフィラデルフィア・カンザスシティ・ボストン・セントルイスの連銀総裁発言が予定されており「出口戦略」のタイミングに関する発言が確認できればもう一段の上昇も考えられよう。

ユーロは、格付け会社大手フィッチ・レーティングスがギリシャの債務格付けを3段階引き下げたのに続き、ベルギーの格付け見通しに対しても引き下げを発表したほか、スタンダード・アンド・プアーズがイタリアの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げるなど、バイアスは弱気となろう。さらに、スペイン地方選で与党の社会労働党が大敗したことを受け、スペインではサパテロ首相への退陣圧力が強まるとみられる上、国民の不満が高い緊縮財政路線も修正を迫られる可能性があろう。また、アイスランドの火山噴火を受けて欧州の空輸が混乱し、経済活動に悪影響が及ぶ可能性もあり、ユーロにとっては正念場が続きそうだ。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   81.50-82.50
ユーロ・円 115.00-117.50
ポンド・円 131.00-134.00

【今日の主な経済指標】
15:00 DEM  国内総生産(GDP、改定値)[前期比] 1-3月期
15:00 DEM  国内総生産(GDP、改定値)[前年同期比] 1-3月期
15:45 FRF  企業景況感指数 5月
17:00 DEM  IFO企業景況感指数 5月
18:00 EUR  製造業新規受注[前月比] 3月
18:00 EUR  製造業新規受注[前年同月比] 3月  
23:00 USD  新築住宅販売件数[年率換算件数] 4月
23:00 USD  新築住宅販売件数[前月比] 4月
23:00 USD  リッチモンド連銀製造業指数 5月

≪2011年5月23日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ブル」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
先週のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録において「出口戦略」について
討議されたことがわかり「強気」スタンスは維持されている。テクニカル
面では依然日足一目均衡表の雲の中に位置していることからこう着感は漂
っているものの、ゴールデンクロスした5日移動平均線の差し掛かる81.75
円付近で値固めできれば、徐々に強含みの相場へ移行していく可能性があ
るだろう。こう着状態を打開するポイントとして、日足一目均衡表雲の上
限82.30円付近が目先のレジスタンスとなるが、上抜けることができれば
フィボナッチ4月6日高値85.518円→5月5日安値79.550円の半値戻し82.54
円付近や、4月27日高値の82.80円付近まで上値余地が広がろう。

ポンド円「ブル」
EU各国の財政問題を背景に世界的な株安連鎖を受けてリスク回避の円買い
が強かったものの、参加者は値ごろ感から「ブル」となっている。先週、
米格付け会社S&Pがイタリアの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げ
たほか、ギリシャへの財政支援も難航していることからも、欧州を取り巻
くソブリンリスクの懸念が徐々に高まってきており、欧州通貨のポンドを
積極的に買い進むのは困難になろうか。

豪ドル円「ブル」
欧州高債務国の財政問題が深刻化していることを背景に、ユーロ圏の経済
成長が鈍化するとの見方から原油は大幅に下落し、資源国通貨の豪ドルに
も売りが広がったものの、参加者は絶対的な金利差を背景に「ブル」を維
持。日米の金融緩和長期化観測が強まるなか、金利差から豪ドルは買われ
やすいものの、中国購買担当者景気指数速報値(PMI)が前月比ベースで悪
化しており、豪経済を支えている中国の景気減速はマイナス要因となろう。
5月5日安値を起点としたサポートラインである85.308円を維持できるかに
注目したい。

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