FXレポート

ドル円は上値の重い展開のなか、ADP雇用統計上振れとなるか!?

昨日のドル円は、主要通貨に対するドルインデックスが約4ヵ月ぶりの水準まで低下するなど、ドル売りの流れを引き継ぐなか、オセアニア市場では81.75円付近で弱含みの展開となった。しかし東京市場では中東・北アフリカ情勢の緊迫化を背景とした原油価格の上昇も落ち着き、日経平均が堅調な推移となったことを好感すると81.95円付近へと緩やかに上昇した。その後も豪準備銀行理事会での声明が一部市場参加者の予想よりややハト派的な内容になったことを受けて、対豪ドルでドル買いが優勢になったことにつれた上、本邦機関投資家などの買いもサポートとなり、東京市場終盤には一時82.25円付近まで上値を拡大した。欧州市場ではGLOBEXのNYダウ先物が上昇幅を拡大し、欧州株も堅調に始まるなど、全般的にはリスク選好の円売りが優勢となったものの、上値では利益確定の売りに押され、82円台前半の高値圏でもみ合いとなった。NY勢参加後はISMが発表した2月の製造業景況指数が市場予想よりも良好だったことを受けてドルは一時上昇したものの、直後にバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言が始まり、米国経済の回復についての慎重な発言をすると引けにかけて緩やかに下落する展開。かろうじて陽線引けとなり81.846円で取引を終えているが、前日比+0.043円とわずかな上昇に留まった。

ユーロ円は、欧州の早期利上げ期待がサポートとなるなか、東京市場では日経平均やNYダウ先物の堅調推移を背景に、リスク選好の円売りが優勢になると113.25円付近へと上昇。また、月初だったことで輸入企業からの欧州通貨買いも通常より活発化しているとの観測が後押しとなると、東京市場終盤に113.55円付近まで続伸した。欧州勢参加後はロシア系のユーロ売り観測もあり、序盤に113.30円付近へと下押ししたものの、その後は欧州株の上げ幅拡大を受けたリスク選好の円売りに加え、独雇用統計で失業者数が前月比-5.2万人と予想の同-1.8万人より減少するなど好結果となったほか、同時刻に発表された独製造業PMI確報値の上振れもあり一時113.724円と日通し高値を更新した。ただし、NY市場に移ると産油国であるサウジアラビアやイランでの中東情勢を背景にWTI原油先物が2%高の1バレル99ドル付近まで上昇したことで景気回復の足かせになるとの見方からNYダウは一時150ドル安となった。軟調な株価を背景にリスク回避型のユーロ売りが引けにかけて断続的に入り、東京・欧州市場での上昇分は剥落し、112.758円で取引を終えている。
           
                                本日の展開

ドル円は、原油高が米国経済の楽観論に水を差し、米国長期金利の低下やFRBの利上げ期待後退を背景に地合が悪化しており、注目されたバーナンキFRB議長の議会証言も景気の先行きに慎重な見方を示すとともに、基本的には金融緩和(QE2)継続を正当化する内容となったことで、もう一段のドル安につながる可能性があるだろう。ただ、今夜は公式雇用統計の前哨戦となるADP民間雇用者数が発表となり、前回の米雇用統計が天候(豪雪)の影響で減少していた事を考慮すると、今回はその反動から非農業部門雇用者数変化は大きく改善する可能性もあり、上振れした場合は大きな上昇となる可能性もあろう。また、投機的な売買動向を見る際の指標となるIMMの主要6通貨の対ドル持ち高状況は、現時点で223.33億㌦の売り越しとなっており、依然として膨大なドルショートが積み上がっている。今週の雇用関連指標で大きく上昇した場合はドルショートポジション巻き戻しの展開を予測するとこもできるため、突っ込んだドル売りには注意は必要となろう。

ユーロは、昨日の2月ユーロ圏消費者物価指数速報値で前年同月比2.4%と上昇したことで欧州インフレ圧力が更に高まっているほか、ECB理事会メンバーからは「ECBは次回の会合で恐らく出口戦略について表明」「政策スタンスの再調整が必ず必要となる」などのタカ派発言が相次いでおり早期の利上げ期待が上昇のサポートとなっている。一方のドルはバーナンキFRB議長による議会証言で目新しい材料が出なく、概ね金融緩和を正当化する内容となっており、対ドルは金利面から引続き強気のバイアスがかかるだろう。ただ、アイルランド総選挙で与党が敗北したことで同国の信用リスクの指標となるCDS スプレッドは拡大基調となっているほか、期待が高まっているだけにECBの利上げ観測が後退した場合には、大きくユーロ売り材料としてクローズアップされるためECBの要人発言には注意は払っておきたい。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   81.00-83.00
ユーロ・円 111.50-114.00
ポンド・円 131.20-135.00

【今日の主な経済指標】
19:00 EUR  生産者物価指数
21:00 USD   MBA住宅ローン申請指数
21:30 USD   チャレンジャー人員削減数
22:15 USA  ADP民間雇用者数
22:30 CAD   鉱工業製品価格
04:00 USA  ベージュブック(地区連銀経済報告)

≪2011年3月1日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ベア」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
米ISM製造業景況指数が上振れし、19ヶ月連続で景気判断の分岐点となる50.0を
上回ったほか、先週のNY地区連銀製造業景況指数、フィラデルフィア地区連銀製
造業景況指数など強い製造業から「ブル」変化はなかった。テクニカル面では先
週木曜日より81.60円付近は強いサポートになって下落を阻んでおり、中期のサ
ポートラインがいまのところ機能していると言えよう。ただ、上値に関しても日
足一目均衡雲下限や21日移動平均線などが集中する82.40円付近が強い抵抗帯と
なっているため、上下一方的なトレンドを形成するのは困難かもしれない。中立
色の濃い展開となった場合は、RSIを眺めながら逆張りも有効となりそうだ。

ポンド円「ブル」
英利上げ観測の流れが強まっていることや、2月ネーションワイド住宅価格が事
前予想(-0.2%)を上回る0.3%が発表されるなどセンチメントは「ブル」とな
っている。ただ、ネーションワイドの指摘では、「2011年の不動産市場も同じく、
取引は低迷して価格は横ばいもしくは緩やかな下落と見られる」とコメントして
おり、住宅市場に関して楽観できる状況とは言えない上、テクニカル面でも5日
移動平均線と25日移動平均線がデッドクロスを形成しているように地合いは弱い
との見方もできるため、深追いは避けたいところだ。

豪ドル円「ブル」
RBA(豪準備銀行、中央銀行)は事前予想通り政策金利を4.75%に据え置いた。
注目されていた声明文では「利上げを急いでいない」と示唆するなどタカ派的な
内容ではなかったが、「緩やかな金融引締め政策スタンスが引き続き適切」とし
たことで「強気」スタンスは継続している。政策金利は4.75%に据え置きだが、
中長期的な利上げ期待は残っている上、原油を中心とした商品高を背景に豪ドル
を物色する動きが強まることも考えられ、押し目では買いに安心感が出てきそう
だ。

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