アイルランド危機、米追加緩和に対する要人発言に注目!
昨日の東京市場ドル円は、序盤こそ83.40円付近で堅調に推移したものの、エバンス・シカゴ連銀総裁が「経済情勢の変化が確信できるまで緩和的な政策を継続したい」とコメントし、さらにローゼングレン・ボストン連銀総裁も「見通しが劇的に変化しない限り、6,000億ドル全額の買い入れを実施へ」との見解を示すと、83.25円付近へと軟調に推移した。その後は日経平均がプラス圏へと浮上する展開となり、リスク回避姿勢の後退から円売りが優勢となったことに支えられたほか、休暇シーズン前のポジション手仕舞いによるドル買いもあり、欧州市場序盤にかけて83.55円付近まで上昇した。しかし、NY勢参加後は米10月消費者物価指数や10月住宅着工件数が市場予想を下回り、米10年物国債利回りが低下幅を広げると日米金利差を意識した円買い・ドル売りで一時83.036円と日通し安値を付けた。引けにかけショートカバーで値を戻したが、ブラード・セントルイス連銀総裁が「6,000億ドルの追加緩和はデータ次第だが、FRBはこのペースで2011年第2四半期末まで国債買い取りを実施するとみている」などと述べたことで戻りが鈍い展開となり83.218円で取引を終えた。
ユーロは終日もみ合いが続いた。EU財務相会合を前に手控えムードが広がる中、ローゼングレン・ボストン地区連銀総裁やエバンズ・シカゴ地区連銀総裁、ロックハート・アトランタ地区連銀総裁など複数のFRB当局者が米量的緩和策を擁護する発言をしたことを受けて、対ドルは1.3515付近へと小反発。対円も日経平均が徐々に持ち直し、リスク選好の円売りがやや優勢となったことから、東京市場では112.75円付近へとやや強含む展開になった。欧州市場に移ると世界第2位の清算・決済機関LCHクリアネットがアイルランド国債を取引する際の必要証拠金を30%に引き上げたことが重石となり、対ドルは1.3465付近、対円も112.40円付近へと押し戻された。ただ、NY勢参加後はギリシャ当局が「ギリシャは新たな歳出削減を明日にも発表へ」ショイブレ独財務相は「ユーロ圏各国は必要なら救済する用意ある」メルシュ・ルクセンブルク中銀総裁は「ユーロ圏は確実に危機を乗り切るだろう」などの要人発言からユーロ信用不安が一服すると小幅反発した。しかし値動きは限定的で、引けにかけても方向感は乏しく対ドルは1.35262ドル、対円は112.572円で取引を終えた。
本日の展開
11月末のヘッジファンドの決算やクリスマス休暇シーズン前のポジション巻き戻しの流れは続いており、欧州通貨や高金利通貨が対ドルで大きく下げていることから本日もドルは堅調と見ることもできる。しかし、ドル円は前日の弱い米経済指標を受け、米国債利回りが低下したことや、アイルランド危機や中国の金融引き締め観測を背景に株安連鎖となっており、ユーロ円などクロスでの円高につられて下振れする可能性も考えられる。テクニカル面では5日間移動平均線をサポートに高値を切り上げており基調の強さを感じるものの、83.50円付近にさしかかる75日移動平均線が壁となっている。また、中長期トレンドを推し量る日足一目均衡表の雲の上限が来週には83.50円付近まで下がってくるため、じりじりと値を下げる展開も考えられる。同水準を超えてさらに上昇するには何らかの上昇材料が必要かもしれない。
ユーロ圏財務相会合はアイルランド問題で意見がかみ合わず、引続き欧州要人発言や、ソブリン問題に関連したニュースに一喜一憂する展開が続きそうだ。各国がアイルランド支援を公表しているものの、アイルランド自身は来年までの国債償還資金を確保しているため、支援を要請して内政に意見を出されるよりは、なんとか自国で難局を乗り切りたい構えだ。その為、問題の着地点が見えてくるまでは、救済策の催促相場で利回り格差の拡大からユーロ売りが続く可能性が高くなりそうだ。また、危機がポルトガルやスペインなど他国に波及するおそれもある上、中国の金融引き締めが間もなく発表されるのではとの思惑からリスク許容度が低下しており、株安連鎖・商品安が継続すれば安全通貨のドルと円に逃避する動きが一段と強まるだろう。テクニカル面でも先週末に5日・25日移動平均でデットクロスを形成してから地合いが悪化しており厳しい状況だ。一目均衡表の上雲が位置する112.50円付近や75日移動平均の111.70円付近がサポートされるか注目したい。
[今日の予想レンジ]
ドル ・円 82.50-84.20
ユーロ・円 110.50-113.50
ポンド・円 129.50-133.50
【今日の主な経済指標】
16:15 CHF 貿易収支
18:00 EUR 経常収支
18:30 GBP 小売売上高指数
18:30 GBP マネーサプライM4速報値
22:15 ZAR 南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利
22:30 CAD 景気先行指数
22:30 CAD 対カナダ証券投資額
22:30 CAD 卸売売上高
22:30 USD 新規失業保険申請件数
00:00 USD 景気先行指標総合指数
00:00 USD フィラデルフィア連銀製造業景気指数
≪2010年11月17日クローズ時点≫
ドル・円 :「ブル」
ユーロ・円 :「ブル」
ユーロ・ドル :「ベア」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円 :「ブル」
NZドル・円 :「ブル」
※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。
ドル円は「ブル」
発表された米10月消費者物価指数と10月住宅着工件数は、市場予想を下回り一時83.00円
付近まで下落すると押し目買いが散見し「ブル」となった。昨日は共和党議員団よりFRB
の追加緩和策に懸念を表明する書簡が提出されたことが明らかになると、緩和策継続へ
の期待感が薄れ米債利回りが上昇した。しかし、FRBはこうした米国債買い入れ規模縮小
に対する懸念を払拭しようと、各連銀総裁は一様に「6千億ドル全額の買い入れを実施」
とコメントした。特にブラード・セントルイス連銀総裁が前日「FRBは国債買取り6千億
ドル全てを購入に使用しないだろう」と述べていたが「FRBは2011年第2四半期末まで国
債買い取り6千億ドル全てを実施するとみている」と意見を一転しており、何か圧力があ
ったのではとの見方もできる。要人発言を含め米追加緩和策の行方に目が離せない。
ポンド円は「ブル」
BOEが発表した11月の金融政策委員会議事録では、「据え置き」「利上げ」「量的緩和の
拡大」の3通りの投票結果となった。理事会の構成メンバーは9人で、投票の結果は、金
融政策の「据え置き」に7人が賛成、センタンス委員が、直近継続して0.25%の「利上げ」
を主張、ポーゼン委員が、前々回からの500億ポンドの「量的緩和拡大」を主張した。現
時点では早期の金融政策の変更は想定しにいとみて参加者のポジションも拮抗したが、最
近の英経済指標の好調を受けて僅かに「ブル」優勢となった。大きなイベントを無事通過
したことで今後はドルやユーロ等の外部要因に左右される展開が予測され、特にアイルラ
ンドに対するエクスポージャーは決して小さくなく、アイルランドの救済策が固まるまで
はユーロ同様にポンドも注意が必要と思われる。
豪ドル円は「ブル」
中国の金融引き締め観測の影響から株安懸念が強まるなか、原油を始め商品市況も軒並み
大幅安となるとリスクテイク意欲後退の展開となったが、金利差を背景とした根強い買い
が継続しており「ブル」となった。しかし、中国の利上げが具体化してきたことは中国の
景気減速懸念につながり、主要貿易相手国である豪経済にとっては逆風となりそうだ。ま
た、株安と商品安の連鎖を受けリスク許容度は低下しており、年度末に向けた投機筋のポ
ジション調整も想定されることから下振れリスクに対する警戒レベルを高めたておきたい。
ユーロは終日もみ合いが続いた。EU財務相会合を前に手控えムードが広がる中、ローゼングレン・ボストン地区連銀総裁やエバンズ・シカゴ地区連銀総裁、ロックハート・アトランタ地区連銀総裁など複数のFRB当局者が米量的緩和策を擁護する発言をしたことを受けて、対ドルは1.3515付近へと小反発。対円も日経平均が徐々に持ち直し、リスク選好の円売りがやや優勢となったことから、東京市場では112.75円付近へとやや強含む展開になった。欧州市場に移ると世界第2位の清算・決済機関LCHクリアネットがアイルランド国債を取引する際の必要証拠金を30%に引き上げたことが重石となり、対ドルは1.3465付近、対円も112.40円付近へと押し戻された。ただ、NY勢参加後はギリシャ当局が「ギリシャは新たな歳出削減を明日にも発表へ」ショイブレ独財務相は「ユーロ圏各国は必要なら救済する用意ある」メルシュ・ルクセンブルク中銀総裁は「ユーロ圏は確実に危機を乗り切るだろう」などの要人発言からユーロ信用不安が一服すると小幅反発した。しかし値動きは限定的で、引けにかけても方向感は乏しく対ドルは1.35262ドル、対円は112.572円で取引を終えた。
本日の展開
11月末のヘッジファンドの決算やクリスマス休暇シーズン前のポジション巻き戻しの流れは続いており、欧州通貨や高金利通貨が対ドルで大きく下げていることから本日もドルは堅調と見ることもできる。しかし、ドル円は前日の弱い米経済指標を受け、米国債利回りが低下したことや、アイルランド危機や中国の金融引き締め観測を背景に株安連鎖となっており、ユーロ円などクロスでの円高につられて下振れする可能性も考えられる。テクニカル面では5日間移動平均線をサポートに高値を切り上げており基調の強さを感じるものの、83.50円付近にさしかかる75日移動平均線が壁となっている。また、中長期トレンドを推し量る日足一目均衡表の雲の上限が来週には83.50円付近まで下がってくるため、じりじりと値を下げる展開も考えられる。同水準を超えてさらに上昇するには何らかの上昇材料が必要かもしれない。
ユーロ圏財務相会合はアイルランド問題で意見がかみ合わず、引続き欧州要人発言や、ソブリン問題に関連したニュースに一喜一憂する展開が続きそうだ。各国がアイルランド支援を公表しているものの、アイルランド自身は来年までの国債償還資金を確保しているため、支援を要請して内政に意見を出されるよりは、なんとか自国で難局を乗り切りたい構えだ。その為、問題の着地点が見えてくるまでは、救済策の催促相場で利回り格差の拡大からユーロ売りが続く可能性が高くなりそうだ。また、危機がポルトガルやスペインなど他国に波及するおそれもある上、中国の金融引き締めが間もなく発表されるのではとの思惑からリスク許容度が低下しており、株安連鎖・商品安が継続すれば安全通貨のドルと円に逃避する動きが一段と強まるだろう。テクニカル面でも先週末に5日・25日移動平均でデットクロスを形成してから地合いが悪化しており厳しい状況だ。一目均衡表の上雲が位置する112.50円付近や75日移動平均の111.70円付近がサポートされるか注目したい。
[今日の予想レンジ]
ドル ・円 82.50-84.20
ユーロ・円 110.50-113.50
ポンド・円 129.50-133.50
【今日の主な経済指標】
16:15 CHF 貿易収支
18:00 EUR 経常収支
18:30 GBP 小売売上高指数
18:30 GBP マネーサプライM4速報値
22:15 ZAR 南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利
22:30 CAD 景気先行指数
22:30 CAD 対カナダ証券投資額
22:30 CAD 卸売売上高
22:30 USD 新規失業保険申請件数
00:00 USD 景気先行指標総合指数
00:00 USD フィラデルフィア連銀製造業景気指数
≪2010年11月17日クローズ時点≫
ドル・円 :「ブル」
ユーロ・円 :「ブル」
ユーロ・ドル :「ベア」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円 :「ブル」
NZドル・円 :「ブル」
※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。
ドル円は「ブル」
発表された米10月消費者物価指数と10月住宅着工件数は、市場予想を下回り一時83.00円
付近まで下落すると押し目買いが散見し「ブル」となった。昨日は共和党議員団よりFRB
の追加緩和策に懸念を表明する書簡が提出されたことが明らかになると、緩和策継続へ
の期待感が薄れ米債利回りが上昇した。しかし、FRBはこうした米国債買い入れ規模縮小
に対する懸念を払拭しようと、各連銀総裁は一様に「6千億ドル全額の買い入れを実施」
とコメントした。特にブラード・セントルイス連銀総裁が前日「FRBは国債買取り6千億
ドル全てを購入に使用しないだろう」と述べていたが「FRBは2011年第2四半期末まで国
債買い取り6千億ドル全てを実施するとみている」と意見を一転しており、何か圧力があ
ったのではとの見方もできる。要人発言を含め米追加緩和策の行方に目が離せない。
ポンド円は「ブル」
BOEが発表した11月の金融政策委員会議事録では、「据え置き」「利上げ」「量的緩和の
拡大」の3通りの投票結果となった。理事会の構成メンバーは9人で、投票の結果は、金
融政策の「据え置き」に7人が賛成、センタンス委員が、直近継続して0.25%の「利上げ」
を主張、ポーゼン委員が、前々回からの500億ポンドの「量的緩和拡大」を主張した。現
時点では早期の金融政策の変更は想定しにいとみて参加者のポジションも拮抗したが、最
近の英経済指標の好調を受けて僅かに「ブル」優勢となった。大きなイベントを無事通過
したことで今後はドルやユーロ等の外部要因に左右される展開が予測され、特にアイルラ
ンドに対するエクスポージャーは決して小さくなく、アイルランドの救済策が固まるまで
はユーロ同様にポンドも注意が必要と思われる。
豪ドル円は「ブル」
中国の金融引き締め観測の影響から株安懸念が強まるなか、原油を始め商品市況も軒並み
大幅安となるとリスクテイク意欲後退の展開となったが、金利差を背景とした根強い買い
が継続しており「ブル」となった。しかし、中国の利上げが具体化してきたことは中国の
景気減速懸念につながり、主要貿易相手国である豪経済にとっては逆風となりそうだ。ま
た、株安と商品安の連鎖を受けリスク許容度は低下しており、年度末に向けた投機筋のポ
ジション調整も想定されることから下振れリスクに対する警戒レベルを高めたておきたい。