FXレポート

ユーロ円4営業日ぶり反発も、欧州相次ぐ格下げに警戒!

昨日のドル円は、オセアニア時間に米格付大手ムーディーズがアイルランドを格下げしたことを受けてリスク回避の円買いが散見したほか、機関投資家によるストップ売りを狙った仕掛け的な動きが加速し、一時78.40円付近へと急落した。しかし、下値では買い意欲も強く、国内外の機関投資家から買いが持ち込まれると今度はストップ買いを誘発し79円台に反発した。その後も、中国の主要経済指標がおおむね予想を上回った事や、アジアの株式市場もじり高基調となったことから79.50円付近まで上昇した。欧州時間では特段の材料が見当たらず、NY時間にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が経済、金融政策に関する半期に一度の議会証言をするため、様子見ムードが漂った。注目されたバーナンキ議長の証言だが、「最近の景気低迷が長期化し、デフレリスクが再び浮上した場合は追加の政策支援が必要になるだろう」「FRBにとってQE3は選択肢のひとつ」と述べるなど、ネガティブな発言が目立ったため、79.023円まで下落して取引を終え、4営業日続落となっている。

ユーロ円は荒れた展開が続いている。朝方は格付け会社大手ムーディーズがアイルランドを格下げしたことを受け、リスク回避的な地合いのなか、営業日の変わる薄商いの時間帯に仕掛け的な円買いが先行し、ストップロスを巻き込む形で一時109.570円まで急落した。ただ、売り一巡後は日経平均が底堅く推移したため、リスク許容度の低下に歯止めがかかったほか、野田佳彦財務相は「最近の円は一方的な動きであり、注意深く見ている」などと発言、さらに枝野幸男官房長官も「実態経済を離れた急激な変動は好ましくないとの観点から、円高を厳しく注視している」などと述べると円売り介入警戒から111円台まで反発。また、欧州勢参加後もドラギ・イタリア中銀総裁が「イタリアの銀行は欧州のストレステストに合格できると確信」などと述べたことや、トレモンティ・イタリア財務相が「緊縮財政策は今週末までには可決される見込み」と発言したことを手掛かりに一時112.058円まで上値を拡大した。しかし、NY時間では格付け会社フィッチがギリシャの格付けを「B+」から「CCC」に引き下げたと発表し、「ギリシャのへの格下げは著しい信用リスクの表れであり、デフォルトが現実的な可能性であることを知らせるもの」との見解を示したため、111.840円まで上昇分を削り取引を終えた。

                               今日の展開

ドル円はファンダメンタル、テクニカルの両面から上値の重い展開が予測される。まず、米下院での議会証言でバーナンキ議長は、「量的緩和第3弾(QE3)もFRBが可能性を排除しない」としてQE3への思惑が高まった他、財政問題については「債務不履行避けるため債務上限引き上げる必要」「財政問題は長期的対処重要、短期間で解決できず」と明言しており、値崩れを起こす可能性は高いといえそうだ。また、チャートを見ても5日移動平均線と25日移動平均線がデットクロスを形成してから地合いが悪く、強固なサポートラインと考えられていた76.180円から85.518円のフィボナッチの76.4%戻し79.50円付近をあっさりとブレイクしたことでレンジの下方修正が必要となりそうだ。仮に前日の安値である78.403円を下抜けた場合は戦後最安値である76.180円を視野に入れた展開となってもおかしくはないか。ただ、野田財務相、与謝野馨経済財政相、枝野幸男官房長官がそろって「円高けん制」ととれる発言をしており、急激な円高には介入警戒感が高まる可能性は否定できず、売りの深追いは慎重に仕掛ける必要があろう。

ユーロは明日開催が予定されているユーロ圏諸国による緊急首脳会議や、同日に公開予定の欧州の銀行ストレステスト(特別検査)の結果を見めたいとの見方が広がっており、結果次第でどちらにでも動けるように現状は柔軟姿勢で臨むべきだろう。ただ、同首脳会議でギリシャやイタリアの債務危機封じ込めへの具体策が示されるとの見方は少なく、上昇を続けるイタリア10年国債の利回りを背景にユーロを売りが再燃する可能性は否めないだろう。また、格付け会社ムーディーズは、アイルランド国債の格付けを「投機的水準」に引き下げたほか、格付け会社フィッチもギリシャ国債の格付けを「ジャンク級(デフォルト手前)」にするなど相次ぐ格下げにユーロは下落しやすい展開が続くだろう。テクニカル的にも前日の上昇は、極端なユーロ売りポジションが修正されただけだと考えれば、前日安値である109.570円まで下落する可能性がありそうだ。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   78.50-80.00
ユーロ・円 109.00-113.00
ポンド・円 126.00-129.50

【今日の主な経済指標】
17:00 EUR 欧州中央銀行(ECB)
18:00 EUR 消費者物価指数
21:30 USD 新規失業保険申請件数
21:30 USD 卸売物価指数
21:30 USD 小売売上高
23:00 USD 企業在庫

≪2011年7月13日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
79円を割れたことで割安感から約95%の参加者が「ブル」と圧倒している。しかし、米雇用統計の悪化に始まりFOMC議事録(6月21/22日分)では、経済成長見通しを下方修正すると同時に、バーナンキ議長は「量的緩和第3弾(QE3)を排除しない」との声明を発表しており厳しい状況に変わりはないだろう。また、米連邦債務上限の引き上げを巡る協議は来月2日の期限を間近に控えているが、依然として難航しており、来月の期限に向けてドル売り警戒感は否応なく高まるだろう。

ポンド円「ブル」
6月の英失業率は4.7%と市場予想通りの結果となり、動意はなかったものの、今週売られたショートポジションの調整が入り「ブル」となっている。欧州各国の相次ぐ格下げや、デフォルト懸念から対ユーロでは消去法的に買いが入りそうが、ギリシャのデフォルト懸念を排除できないなか、投資家の不安心理を示す恐怖指数は、一時20ポイントの大台に乗せるなど市場の不安心理は拡大しており、対円では引き続き警戒が必要となろう。短期的には、日足一目均衡表の転換線127.90円付近、同基準線128.50円付近が上値のメドとなろうか。

豪ドル円「ブル」
昨日は中国経済指標が発表され、結果は第2四半期GDP前年比+9.5%(予想:+9.5%)、鉱工業生産前年比+15.1%(予想:+13.1%)、小売売上高前年比+17.7%(予想:+17%)となり、概ね予想値を上回ったことが参加者に好感され「ブル」となっている。短期的には欧州債務問題懸念が根強くクロス円の下落とともに上値の重たい値動く可能性は否定できないものの、日米欧の政策金利や、経済情勢を鑑みれば今後も資源国への資金シフトが続く可能性が高く、中長期的な買い場を探す絶好のチャンスと考えることもできようか。

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