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イギリスのEU離脱期限が3月29日に迫るなか、ポンドは神経質な動きが続いています。メイ首相は「3月29日に離脱する」と明言していますが、英議会の説得やEUとの修正案の議論には時間が必要となるため、実際のところ離脱延期の選択肢が濃厚です。しかし、延長後も具体的なことは何も決まっておらず、以前として先が見えません。混迷するブレグジット!今後の展開として3つの選択肢を考えていきたいと思います。
様々な選択肢が想定され、先の読みにくい展開ではありますが、まず合意なき離脱について考えてみます。合意なき離脱はブレグジットのなかでも最悪のシナリオです。金融部門だけを考えても世界一の市場と言われるロンドンはその地位が奪われるかもしれません。なぜならEU全域での営業を可能にしている単一パスポートの権利を奪われ、清算や決済に影響を及ぼすことになるからです。BOE(英中央銀行)によれば、合意なき離脱で影響を受けるデリバティブ取引は約38兆ドル(4,200兆円)にのぼるとの試算が出ています。
事実、日本のホンダは工場閉鎖を決定し、独BMWや米フォードも合意なき離脱になるのであれば、生産を停止するとの報道がありました。さらには英ダイソンまでもがシンガポールに本社移転を発表しており、本当にイギリスが合意なき離脱を選択するのであれば経済的な大混乱が予想されます。ポンド円は一時的に120円~130円付近まで大暴落するのではないでしょうか。
国民投票のやり直しをおこなう確率が高いとは言えませんが、混迷を極めるブレグジットをみていると個人的にはもはやEU離脱を断行する必要性はないのではと思っています。EU側からも英議会が何も決められないのであれば「もう一度国民投票をしてみてはどうか」と促しています。英国内でも「もう一度国民投票を行うべき」などの世論の意見が急速に増えていて、事態打開のために再実施すべきとする英議員も与野党を問わず増えています。メイ首相は、国民投票のやり直しについて、「民主主義に反する」と否定していますが、理解が低いまま行われた2016年の国民投票からもう2年以上が過ぎ、ブレグジットに対して理解が深まった今こそ改めて選択することに意味はあると思います。
そして、国民投票のやり直しがあれば、ブレグジット撤回となる可能性は高そうです。世論調査では2度目の国民投票が実施された場合、離脱46%に対して残留54%になるという結果が発表されています。ブレグジット前のポンド円は155~175円前後で取引されていたため、もし再投票でブレクジットが否定されれば、ポンド円は元の鞘に戻りますので160円台回復もあるでしょう。
イギリスはリスボン条約第50条に基づいて離脱を3月29日までに行う必要があります。このXデーを滞りなく迎えることができるかどうか、それが3月12日に行われる2度目の本採決で決まります。ただこの本採決で下院議員たちを説得できるだけの協定案を示すことができるかどうかは懐疑的で、採決は否決される可能性が高いとされています。ここで否決されると、翌日13日に”合意なき離脱”の採決、さらにこれが否決されれば翌14日にEUとの交渉延長の採決が執り行われます。以上を整理するとともに大勢の予想も付け加えると、
2019/3/12 | 離脱案の本採決→否決 |
2019/3/13 | 合意なき離脱採決→否決 |
2019/3/14 | 交渉延長採決→可決 |
2019/3/29 | 離脱期限日→延長 |
となります。ただ、これは英国議会内での採決であり、仮にイギリスが離脱期限の延長を議会採決で可決したとしても、EU側が承認しなければ無意味となります。このように英議会の説得やEU側の承認には時間が必要となるため、実際のところ3月29日の離脱は延長されることになりそうです。
2019年3月8日時点
米ドル/円や欧州主要通貨を主戦場に、日々マーケットと戦う敏腕為替ディーラーとして活躍中。 ファンダメンタルズから見たマーケットの分析に精通しているほか、行動心理学とテクニカル分析を駆使した短期売買にも定評あり。日経CNBC、FX雑誌、ウェブサイトでのマーケットレポート連載など、各種メディア出演実績も多数。
日銀がある日本橋に生まれ、日銀とともに育った江戸っ子で実家は二代続く焼き鳥屋、神田の隠れた名店。焼き鳥にも独自のこだわりを持っている。
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