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広大な国土と世界トップの人口を擁する経済大国である中国。その歴史・文化は古く、世界有数の世界遺産の宝庫として、日本を含め世界から多くの観光客が訪れます。政治の中心である首都・北京のほか、中国最大の金融都市として発展を続ける上海など多くの大都市を抱えています。中華人民共和国は1949年10月に当時の毛沢東国家主席によって建国を宣言されました。一般的には社会主義国家に位置付けられますが、市場経済という資本主義の要素を取り入れたことが特徴です。1990年代初頭、当時の江沢民国家主席が「社会主義市場経済」を推進したことで同国は目覚ましい発展を遂げました。1997年に香港返還、1999年にマカオ返還が実現し、「一国二制度」の下で特別行政区と位置付けられました。2010年にGDP(国内総生産)で日本を抜くと、現在までアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国であり続けています。また、今後著しい成長が期待される新興国の代表「BRICS」にも名を連ねています。なお発展途上としての一面を有し、更なる成長可能性秘めていることは特筆すべき点でしょう。
中国は世界有数の貿易大国である点も見逃せません。2001年の世界貿易機関(WTO)への加盟を経て、貿易シェアは輸出入共に世界トップクラスです。中国の経済・景気動向の良し悪しが貿易相手国の動向にも影響を与えます。時には世界経済や為替相場などにも広く波及する場面も見受けられ、世界における中国の立ち位置は極めて重要と言えるでしょう。政治面では建国以来、事実上の中国共産党による一党独裁体制が続いています。現在トップの習近平国家主席は3期目(1期・5年)に突入し、異例の長期政権となっています。現在は「ゼロコロナ政策」終了からの景気立て直しといった難局を迎えていますが、今後の舵取りに注目が集まります。
中華人民共和国が発行する通貨は人民元(CNY)と呼ばれます。通貨の単位は元(Yuan、ユアン)となっており、補助単位に角(Jiao、ジャオ)、分(Fen、フェン)があります。香港では独自通貨「香港ドル」が使われており、中国人民元とは別に扱われます。人民元はもともと米ドルとの固定相場を採用していましたが、2005年7月に人民元改革が行われ、通貨バスケット制を参考にした管理変動相場制へと移行しました。新制度へ移行の際に、対米ドルで人民元が約2%切り上げられ、人民元の自由化に向けて一歩踏み出すことになりました。暗号資産の注目度が高まる中、2019年に中国政府は「デジタル人民元」構想を打ち出しました。他国に先行した最先端の取り組みに注目が集まっており、将来的なデジタル人民元の普及から中国・人民元の更なる地位向上が期待されています。
人民元相場は管理変動相場制によってコントロールされており、中国本土の住居者や、貿易など実需に基づく取引に限られるほか、毎日人民銀行が発表する1ドルあたりの人民元の基準値レートで日中の変動幅を上下2%以内に設定するなど多くの制限が課せられています。中国当局にとっては通貨の価値をコントロールするための規制ですが、この規制により、人民元は外国為替市場にはほとんど流通しない流動性の低い通貨となっていました。しかし、急激な経済成長を遂げている中国としては、国際金融市場から取り残されるわけにはいかなかったため、中国本土の人民元(CNY)取引市場とは別に、2010年に中国本土外の人民元(CNH)取引市場を立ち上げました。
マーケットではCNYを「オンショア人民元」、CNHを「オフショア人民元」と呼んでいます。ただ、それぞれが異なる貨幣というわけではなく、調達先によって表記が区別されています。2つの人民元相場では取引ルールや市場参加者が異なるため為替レートも異なります。このように人民元には2つの市場がありますが、現在市場規模を拡大させているのはCNH(オフショア)になります。市場を拡大させている要因として中国政府が正式に認めた市場であるということはもちろんですが、規制緩和により人民元の調達コストが低減し、世界中から取引参加者が集まったことが挙げられます。そしてみんなのFXをはじめ多くのFX会社が取り扱う人民元もこの「CNH(オフショア)」となります。
人民元は世界第2位の経済大国の通貨として、投資対象としての安定感や高い将来性を有している点が最大の特徴です。中国の「国債格付け」は日本よりも高く、他国と比較した信用リスクは低くなっています。また、日本の為替介入で話題となった「外貨準備高」は世界第1位で、相場の急変時に為替レートを安定させる能力が高いことも魅力に挙げられます。
人民元は2016年に国際通貨基金(IMF)の定める特別引出権(SDR)構成通貨に採用され、米ドルやユーロ、日本円、イギリス・ポンド、スイスフランと同様に主要通貨に位置付けられたことで、国際的な人民元の信用度は高まりました。また、世界各国の主要金融機関が参画する国際銀行間通信協会(SWIFT)の発表では、2021年12月の国際決済における人民元のシェアは日本円を抜いて世界第4位となっています。2022年序盤からはロシア・ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、ロシアは米ドル・ユーロといった決済網から外れることになりました。ロシア国内では金融市場や貿易決済において、人民元が代替の決済通貨として急激に需要が増加しています。過去には「人民元ショック」が発生し、一時的に通貨安が進むなど不安定な時代もありましたが、今後「国際決済通貨」として大いなる期待に満ち溢れている通貨といえるでしょう。
出所:ブルームバーグ
2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大によって中国経済は大きな打撃を受け、人民元/円は一時15円台を割り込む場面もみられました。ただ、都市封鎖(ロックダウン)などの措置を早期に行ったことで経済活動の回復をいち早く実現します。同年夏以降には他国に先行した景気回復への期待感から人民元/円は上昇トレンドを形成し、2021年も国内のワクチン接種の進展が中国経済・人民元の優位性を支え、堅調さを維持しました。
2022年も円安進行を追い風に底堅く推移しましたが、新型コロナウイルス感染症の再拡大を抑え込むための「ゼロコロナ政策」が見通しを曇らせます。一時は北京や上海といった大都市で都市封鎖が行われ、厳格な行動制限などが実施されたことで、中国の景気後退懸念や経済の先行き不透明感の拡大が相場の重しとなりました。ただ、2023年2月に「ゼロコロナ政策」が正式終了し、経済活動の再開による人民元相場の回復に期待がかかるなかで、節目20円に一時乗せるなど底堅く推移しています。
2023年後半からの中国人民元/円は、「ゼロコロナ政策」終了を経た中国経済及び金融政策に絡んだ相場が予想されます。
先述の通り2022年は、新型コロナウイルスの再拡大やそれに伴う「ゼロコロナ政策」の実施による景気後退懸念、経済の先行き不透明感の広がりが大きな上値圧力となりました。アフターコロナ相場では、世界的な景気回復とそれに伴うインフレ進行や利上げがメインテーマとなり、景気下支えのために政策金利を据え置く中国はこのテーマの波に乗りきれず、マーケットにおける人民元の存在感は薄れました。しかし、遂に「ゼロコロナ政策」の終了・展開を迎えたことで、経済回復・長期的な成長期待による人民元の買い支えに期待がかかります。また、現在は景気テコ入れのための利下げを実施していますが、いずれ景気が回復基調となれば国内のインフレ上昇から、今後再び利上げ局面を迎える展開も想定されるでしょう。現時点でも日本とは金利差がある状況ですので、更なる金利差拡大の動きとなれば、中国人民元/円は人民元高優勢の流れで、キャピタル・インカム両面で優位性がみられそうです。
このほか、米中関係の動向にも引き続き気を配りたいです。2020年11月に民主党のバイデン大統領が就任し、米中関係は比較的落ち着きをみせています。トランプ前大統領とは対照的な印象が強いですが、バイデン政権下においても2021年3月には中国との通商政策の総合的な見直し、不公正な通商制度の是正を掲げる報告書が公表されました。直近も中国通信大手企業の上場廃止や、中国企業の通信機器等の輸入・販売の禁止措置を発表するなど火種はゼロではありません。米国議会では中国への強硬姿勢を掲げる超党派が根強いこともあり、対中政策に係る政治面の動向からは目が離せない展開が続きます。米中対立が激化する局面では円高・人民元安となる傾向があるほか、足元では中国不動産市場の低迷などの懸念材料も出ており、中長期的な上昇を見通して下値を拾っていく戦略のほか、短期的な人民元売りのトレードにも妙味がありそうです。
現在でも、両国の金利差によって人民元/円を買いで保有することで得られるスワップポイントは魅力的です。お客様に魅力的なスワップをご提供するためにカバー取引先との交渉を重ねており、中国の将来性を期待して人民元を保有されるお客様にご満足いただいています。みんなのFXでは1,000通貨から取引が可能で、約760円の証拠金を預けることで取引を始められます。(1CNH=19円で計算した場合)米ドルやユーロといった通貨と比べて価格が低く、少ない資金から取引が始められます。長期保有を前提にトレードすることで、複数に分けてエントリーすることや資金管理もしやすくなり、余裕を持って取引に臨める点も利点の一つです。
短期トレードで為替差益を狙うこともできますが、スワップポイントをもらいながら時間を味方につけることができます。含み損を抱える場面でもスワップポイントでカバーすることもできることから、長期保有も重要な戦略です。みんなのFXでは「スワップシミュレーション」を提供しており、1か月~35年の期間でスワップ収益を簡単に計算することもできます。
皆さんも「みんなのFX」で人民元/円の取引を検討してみてはいかがでしょうか。
(2023年8月時点 トレイダーズ証券 市場部)
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トレイダーズ証券市場部為替ディーラー
日々、海外のニュースやチャートをチェックし、インターバンク市場にて外国為替の取引をしている、トレイダーズ証券 市場部所属の為替ディーラーが、この記事を執筆しました。
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