エリオット波動理論とは?覚えておきたい特徴とFX取引での活用法

チャートを長期的に俯瞰(ふかん)してみたとき、底と天井には何らかの法則性があるように思えます。一般的には景気循環(好況と不況のサイクル)との関連性が理由とされています。景気循環に関しては経済学においてコンドラチェフ・ジュグラー・キチンなどの理論が有名です。この理論をチャート上の値動きにおいて確立したのが「エリオット波動理論」です。それでは解説していきます。

エリオット波動理論の基礎知識

エリオット波動理論とは?

エリオット波動理論はチャート理論の一つで、エリオット波動とも言われます。米株アナリストのラルフ・ネルソン・エリオットによって1938年に研究・発見された歴史ある理論です。この理論を一言で表すと「相場波動は5つの上昇波と3つの下降波を基本としてひとつの周期が成り立っているとする考え方」というものです。これらの周期は人間の集団心理によって繰り返されるとされており、数分から数年といった様々な時間軸において観察されます。もとは株式チャートの分析手法として誕生しましたが、今では株式のみならず為替をはじめとする投資に関連する相場全体の分析手法として用いられています。
波動の規模には、グランドスーパーサイクル(100年以上)、スーパーサイクル(50年)、サイクル(10年)、プライマリー(3-5年)、インターミディエット(30週-50週)、マイナー(10週)、ミニュット(3-5週)があります。

エリオット波動の基本

エリオット波動の基本は5つの推進波と呼ばれる波と3つの修正波と呼ばれる波からなります。波の事を波動と呼ぶこともありますが、基本的には同じ意味です。推進波は相場が進行することで上昇の場合もあれば下降の場合もあります。修正波は推進波の5波動が終わったら、価格を逆行して修正する波のことです。
エリオット波動理論はとっつきにくいイメージが持たれがちですが、基本原則は次のたった3つだけです。
・波動1・3・5の中で波動3が一番短くなることはない
・波動2が波動1よりも安値をつけることはない
・波動4が波動1の高値を下回ることはない
これらの原則をおさえればエリオット波動への理解は比較的深まりやすいでしょう。
これらの基本原則に則った波動がいくつにもフラクタル構造(入れ子状態)になっており、その組合せで分析の幅が広がっている点も併せておさえておきたいポイントです。

推進波の5つの波は出てくる順番に1波、2波、3波、4波、5波と呼ばれています。波の構造をみると1波、3波、5波が大きな波となりアクション波、その流れを一時中断したり逆方向に戻す小さな波を2波、4波のリアクション波と呼びます。基本的な周期は1(アクション波)→2(リアクション波)→3(アクション波)→4(リアクション波)→5(アクション波)のワンセットです。これら波の1つ1つがフラクタル構造になっているので、1波の中に更に5つの波が存在しているということになります。また修正波も同様に波の呼び名がa波、b波、c波と変わりますが、a波(アクション波)→b波(リアクション波)→c波(アクション波)の一連の動きは同じ動きで価格を戻していきます。

エリオット波動とフィボナッチ比率

エリオット波動はフィボナッチ比率の黄金比をベースとしています。そのためフィボナッチ比率を活用することで波動の転換点を予測することができます。フィボナッチ比率は自然界や生命の起源を語る時や人が心地よいと感じる黄金比となっており、集団心理が働いているとされる相場やチャートの中にも自然と出現するだろうという考えに基づいています。そのためチャートの分析にはフィボナッチ・リトレースメントを併用することが多いです。

> フィボナッチ・リトレースメントについて詳しく見る

エリオット波動の押さえておきたい特徴

エリオット波動の基本原則がわかった次は波動のパターンとチャートパターンを見ていきましょう。これらの波動パタ-ンが部分的なパーツとしてチャートパターンを形成しています。基本原則>波動パターン>チャートパターンの順で理解を深めればエリオット波動に対する理解も深まるでしょう。

6つの波動

・I波動
上昇もしくは下降のみを表す1本の線で表されるシンプルな波動です。I波動を形成したあとにV波動となる傾向があります。

・V波動
V波動はI波動が2つ連続して形成される波動です。V波動はI波動のあとに形成され、N波動などに繋がるケースがしばしば見られます。

・Y波動
Y波動は逆三角形のペナントを形成する波動で後述するP波動の逆の波動です。徐々に値幅が大きくなっていくため、高値・安値を更新しながら拡大三角を形成していきます。つまり、高値→安値→高値→安値→高値→安値を更新しながらペナントを形成するということです。エントリー難度が非常に高く、トレード上級者でもY波動に関してはトレードを控える傾向にあります。

・P波動
P波動は三角形のペナントを形成する波動で三角持ち合いと呼ばれる状況で出現します。形成されたのちはN波動への繋がりが考えられます。

・N波動
N波動は上昇・下降の値幅が等しい波動のことです。N波動は最も基本的な波動で、このN波の中に様々な波動が形成されるパターンが殆どです。レンジ相場や上昇・下降トレンドの発生時にもN波は形成されます。

・S波動
S波動は高値(安値)更新した後に修正波が入った場合に、前回の高値(安値)がサポート・レジスタンスとして機能し再び反発後、高値(安値)をつけにいく波動です。
N波動後に反発し、形成されるケースが多いです。高値(安値)を連続で更新するので強気のトレンドが発生している際に形成される傾向にあります。

よく見られるトレンド回帰型のチャートパターン

・トライアングル
上昇・下降の値幅が次第に狭くなるチャートパターンで三角形を描きながら横ばいの波動となっていきます。通常は徐々に収束していきますが、波動の形で上昇型トライアングル・下降型トライアングル・拡大型トライアングル・ランニングトライアングルといった複数の種類のいずれかに分類されます。

・ブロードニングフォーメーション
最高値更新と最安値更新を交互に繰り返して拡大していく波動です。逆三角形の形状をしており、先程のY波動と形は同じとなります。通常のトライアングルと異なり、取引量・取引参加者が徐々に増えていくシチュエーションで形成されます。そのためマーケットの天井で形成されるパターンが多いとされています。

・ペナント
トライアングルとほぼ同義です。

・フラッグ
高値同士と安値同士を結んだ長方形内で価格が上下し、均衡状態を保っている様子です。典型的なレンジ相場ですが、上昇もしくは下降方向に進行していることが特徴です。急激な値動きの前に形成されるケースが多いです。

・ウェッジ
値幅の小さな状態が長く続いている波動です。トライアングルやペナントの進行方向がより鋭利な角度で形成されています。長い時間をかけて徐々に値幅が縮小するため比較的穏やかな相場時に形成されます。しかし、エネルギーを貯めている状況とも言え、反発時は急激に反発する恐れがあります。

よく見られるトレンド転換型のチャートパターン

・ダブル
2つの山が出現しトレンドの終わりに形成される波動です。ダブルトップとダブルボトムがあり、それぞれ上昇・下降トレンドの終わりに出現します。トップは3,5波の山が、ボトムは2,4波の谷がそれぞれ山を形成します。

・ヘッドアンドショルダー
3つの山が形成される波動です。特徴としては5波にあたる真ん中の山が最も高くなる点が挙げられます。トレンド時によく出現しますが、これも反転のサインです。

・ライン
ライントップと呼ばれる山の頂点が同値に位置している波動です。相場が横ばいに推移していることを表します。相場の天井で見られますが、ラインの場合は1,3,5波の3回天井を付ける点に注意したいです。

・ソーサ―
ラインとほぼ同じ状況で出現しますが、天井が直線ではなくおわん型の曲線となっていることが特徴の波動です。

エリオット波動理論の活用法

では実際に波動のパターンとチャートパターンをチャートの中に見つけた場合どのような取引戦略を立てればよいのでしょうか。また、エリオット波動を自分の取引にどのように役立てればよいのでしょうか。ここでは、エリオット波動理論を貴方のトレードに活用するための活用法を紹介します。それでは見ていきましょう。

エリオット波動を利用する際はまずトレンドの発生をチャートから読み取りましょう。波動の基本形であるN波を見つけてトレンドの発生とトレンドの方向(上昇・下降)を捉えましょう。

①利益確定や損切りのタイミングを考える際に参考にする
波動は値幅や方向感の分析に役立ちます。そのため、利益確定ラインや損切ライン、またそのタイミングを考える際の参考になるでしょう。他のテクニカル指標と組合わせて使用して根拠を増やしておけば確度は高まるでしょう。当然、過信するのではなくそのラインで反発する一定の可能性があるという判断にとどめることは忘れないようにしましょう。

②3波の波に乗る
エリオット波動を用いた最もシンプルなエントリー方法は3波を捉えてエントリーする方法です。3波は全5波の中で最も上昇・下降する幅が大きく、大きな利益を狙いやすいメリットがあります。具体的なエントリーのタイミングですが、2波の途中、1波の高値(安値)を超えたタイミングです。この高値(安値)を超えるかどうかはしっかりと確認する必要があります。決済のタイミングは3波の終盤がベストでしょう。

③4波の波に乗る
エリオット波動を用いたもうひとつの最もシンプルなエントリー方法は4波を捉えてエントリーする方法です。4波で3波と逆サイドの注文をすることで下落(上昇)局面でも利益を狙いにいけます。ただ、4波は3波に比べて値幅が小さいので5波の推進波が来る前の決済を忘れないようにしましょう。

④フィボナッチ・リトレースメントと組合せて使用する
フィボナッチ・リトレースメントは高値と安値の値幅にフォボナッチ比率をかけたもので、どこが波動の反転箇所(サポート・レジスタンス)となるかを判断する材料となります。フィボナッチ・リトレースメントでは、「23.6%」、「38.2%」、「50.0%」、「61.8%」、「76.4%」の比率に自動的にラインが引かれるため視覚的にもどこで反転するのかといった判断が単純にしやすいのも特徴です。

基本のテクニカル指標をマスターしたら、チャレンジしてみよう

エリオット波動について、イメージがつかめましたでしょうか。プロトレーダーの中には、エリオット波動だけを見て、相場のレジスタンスやサポートのポイントを見極め、売買を行う人もいます。ただ、エリオット波動はどちらかというとFX上級者向けのテクニカル指標ですので、これからFXを始める方、始めたばかりの方は、基本的なテクニカル指標を先にマスターしましょう。基本をおさえたところで、ぜひエリオット波動を使った分析にチャレンジしてみてください。

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